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史上初! 大阪決戦!!  センバツ決勝

森本栄浩毎日放送アナウンサー
ついに実現した大阪決勝。近年の大阪をリードする2強がセンバツの決勝で激突する

ついに大阪の2強が甲子園の決勝で激突することになった。近年は夏の直接対決で大阪桐蔭が圧倒し履正社の甲子園出場を阻んでいるが、このチームは秋の大阪大会で当たって履正社が勝っている。夏はありえない対戦が、甲子園という最高の舞台の、それも決勝で実現する。

履正社は9回に逆転

履正社は苦しい試合だった。今大会限りで退任する永田裕治監督(53)の最後を飾ろうと闘志を燃やす報徳学園(兵庫)に9回まで1点のリードを許す。先攻、8番からの攻撃、と状況は最悪だった。ここで岡田龍生監督(55)が動き、白瀧恵汰(2年)を代打に送る。白瀧は期待に応え、右中間を破って、あっという間に1死3塁の同点機ができた。報徳は3回途中からロング救援の池上颯(3年)の消耗が激しく、履正社は四球を挟んで、2番・溝邊冬輝(3年)のセーフティースクイズを敢行。「あそこはあれしかない。いつも練習していますから」と岡田監督も自信を持つ作戦でひとまず追いついた。

履正社のエース・竹田は準決勝でも81球。4試合で470球を投げている。
履正社のエース・竹田は準決勝でも81球。4試合で470球を投げている。

報徳はさらに左腕を救援させ、安田尚憲(3年=タイトル写真)封じに出るが、四球で満塁とすると、不振だった4番・若林将平(3年=主将)が右前に落とし、勝ち越した。さらに併殺をあせった報徳の守備の乱れにも乗じ、突き放すと、エース・竹田祐(3年)が、粘る報徳を振り切って、辛くも決勝進出を決めた。この日は主砲の安田にも待望の一発が生まれた。弾丸ライナーで右翼席に突き刺さった打球は、今大会屈指のスラッガーにふさわしい。前日も左腕から3安打していて復調気配の安田は、「ずっとスイングは悪くなかった。冬にやってきたことを全部出せた試合。優勝するために履正社を選んだ。日本一だけを目指してやってきた」と自信を持って決勝を迎える。岡田監督は、「強力打線相手なので、バッテリーが粘れるか」とエース・竹田の踏ん張りを願った。

大阪桐蔭は競り合い制す

大阪桐蔭は意外な形で秀岳館(熊本)を振り切った。桐蔭はエースの徳山壮磨(3年)が117球の力投で、強力打線を1点に抑え、2-1で競り勝った。

大阪桐蔭の徳山は2試合連続の完投で、雄たけびをあげる
大阪桐蔭の徳山は2試合連続の完投で、雄たけびをあげる

西谷浩一監督(47)は、「しっかり守れたのが勝因。粘り強く戦えた」と満足そう。徳山も、「(強打線なので)強気でいった。ひとりひとり、落ち着いて丁寧に投げられた」と振り返る姿は自信にあふれている。2回戦で静岡に初回に6点を奪いながら逆転を許し、終盤に追いついてひっくり返した。この試合がチームに自信と勢いをもたらしている。2年生の成長が著しく、「試合を通して成長が実感できる」(西谷監督)と指揮官も手応えを口にした。

大阪ツートップは桐蔭優勢も、このチームでは履正社に軍配

全国の高校野球をリードする大阪勢で、近年はスーパー2強として君臨するライバル。夏の記念大会といえども同時出場することはなく、まさに甲子園で実現する「夢の対決」。このチームは秋の大阪大会の準決勝で当たっていて、履正社が7-4で勝っている。履正社は竹田が完投。桐蔭は徳山が打たれ、計5投手をつぎ込んだ。安田が3ランを放つ活躍を見せ、内容以上に履正社の完勝だった。ただ、この両校は、夏の対戦では、10年以上、履正社が勝ったことはない。秋は履正社が先行し、夏に桐蔭が抜き去る構図になっている。ちなみに、昨夏は、桐蔭が履正社と当たる前に敗退していて、履正社が甲子園切符を手にした。桐蔭の徳山は、「(秋は)僕が打たれて負けているので、借りを返したい」と秋の雪辱に燃える。ポイントは両校先発の出来で、特に投手層が厚い桐蔭の継投がカギを握る。また、徳山の疲労を考慮すれば、根尾昂(2年)ら、徳山以外の先発起用も考えられる。履正社打線は安田に当たりが戻り、若林も勝ち越し打を放って気をよくしている。桐蔭は絶好調の山田健太(2年)の打順を上げ、奏功していて、打順の組み替えもありうる。また、神宮枠ができてから、神宮王者がセンバツで優勝したことはなく、履正社にはその「ジンクス」破りの期待もかかる。2年生が多い桐蔭の勢いが上回るか、履正社が報徳戦で見せたような底力を発揮するか、熱戦になるのは間違いない。

惜敗の報徳は新監督に託す

報徳は惜しい試合だった。

最後の試合前ノックに向かう報徳の永田監督。後方の帽子姿は後任の大角部長
最後の試合前ノックに向かう報徳の永田監督。後方の帽子姿は後任の大角部長

秋は小粒で、ここまでの活躍を期待できるようには映らなかったが、さすがは名門。23年率いた永田監督の花道を飾ろうと、ナインが奮起した。エース・西垣雅矢(3年)は速球に力強さが出て、小園海斗(2年)が牽引する打線も機動力を絡めて実に洗練されていた。見違えるほど逞しくなったチームに、「素晴らしい生徒たちに囲まれ幸せ。最後も報徳らしい試合だった。頑張ってくれた選手たちに感謝、感謝です」と涙を浮かべた永田監督。教え子の大角健二部長(36)にバトンを渡し、通算40試合目の甲子園采配を終えた。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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