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21世紀枠の地区候補決まる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツの目玉「21世紀枠」今春は大島(鹿児島)など3校が甲子園で躍動した

センバツは招待試合であるから、主催者の裁量で出場校を自由に選んでもかまわない。ただ、全国大会であるから一定のレベルを満たしていないと「興行」優先のそしりを免れない。そこで、秋の地区大会で好成績を収めたチームを優先的に選ぶようになった。したがって、来春の出場校も現時点である程度は見当がつく。微妙なのはせいぜい4~5校にすぎない。過去を振り返ると、秋の大会が終わった段階で、代わり映えしなさそうな年があったのは事実。そこで導入された新機軸が「21世紀枠」というわけだ。従来の戦力重視から、実績は劣っても地区で評価の高い学校だったり厳しい環境を克服して部活動に取り組むチームに甲子園のチャンスを与えようという趣旨で始まった。

候補は9校。秋の地区割りと同じで、関東と東京のみ抱き合わせて1校。1月23日の選考会当日、一般枠よりも前にプレゼンテーションが行われて、この枠の特別選考委員による投票で決まる。

今春、小山台は都立校として初めてセンバツの舞台に立った。21世紀枠の意義は大きい
今春、小山台は都立校として初めてセンバツの舞台に立った。21世紀枠の意義は大きい

北信越、東海までの東日本5地区から1校。近畿以西の4地区から1校選出したあと、残る7校を再検討してもう1校を選ぶ。地区大会に出場していないチームも多く、戦力比較が難しいため、プレゼンは非常に重要。極端に言えば「プレゼン次第」で決まると言ってもいい。おのずから立ち位置は9校横一線と言え、3分の1の確率で甲子園に出られる。選手も地元も夢舞台へ思いを馳せていることだろう。リリースされた資料をもとに、候補9校を地区選考過程とともに紹介する。

北見工(北海道)

秋の北海道大会で8強入り。初戦で甲子園経験のある札幌第一を破り、準々決勝で東海大四に9回2死から逆転サヨナラ負けした。東海大四(今夏南北海道代表)はその後、道大会優勝し、神宮でも1勝した。三段論法になるが、全国でも戦える力を有しているはずだ。学校は昭和47年夏に唯一の甲子園を経験。初戦で星稜(石川)に敗れた。北見は北海道でも気候が厳しく、日照時間が短い。電気科生徒の作った照明を利用し、ビニールハウスの中で練習に励んだ。ボランティアにも積極的で、地域から高い評価を得ている。北海道はベスト32から選考に入ったが、甲子園経験校4校を破った実績と、主戦の中川裕元(1年)の好投が決め手で、満場一致の決定となったようである。

松島(東北=宮城)

秋の県大会で仙台育英に敗れたものの、3位で出場した東北大会では宮古商(岩手)に快勝。2回戦で東北準優勝の大曲工(秋田)に延長10回サヨナラで惜敗した。2年連続で県の推薦を受け、初の地区候補。今年、異色の「観光科」が設置され、話題になった。東北大会では全校応援をするなど、一体感がある。近隣の石巻工が21世紀枠で出場し、今春には東陵(気仙沼)も甲子園の土を踏んだことも、刺激になったようである。東北の候補選考は同じ被災地の宮古商との一騎打ちになった。部員の地域や学校への貢献度、昨年も推薦されていることなどがわずかに上回った理由だが、何よりも東北大会での直接対決勝利が大きく、誰もが納得のいくものだった。

富岡(関東・東京=群馬)

明治30年創立の伝統校。全校挙げての学習、部活動の両立に取り組み、実績を残している。チームは昨秋の県大会準決勝で健大高崎に3-7で敗れてベスト4。関東大会出場は叶わなかったが、地元では富岡製糸場の世界遺産登録で盛り上がっていることもあり、同校の活躍はタイムリーであった。平成30年には女子高との統合が決まっているようで、千載一遇の甲子園チャンスに期待が膨らむ。関東の選考は富岡と松戸国際(千葉)の2校に絞られ、富岡が県立普通高校で、練習時間が限られている中での勉学と両立していることに評価が集まった。

豊橋工(東海=愛知)

創立70年を超える伝統工業高校。大学や地元企業に多くの人材を送り出し、地域の工業発展に寄与してきた。野球部は昭和22年の創部で、近年、強豪ひしめく愛知で上位に進出するようになった。前チームは東邦と春、夏と激戦を演じ、夏は打倒・東邦にあと一歩と迫った。秋は3位で東海大会初出場。初戦で敗れたが、エースの森奎真(2年)は140キロを超える速球を投げ、プロも注目する逸材だ。同校は清掃活動を日課にするなど近隣住民から高い評価を受け、「日本善行賞」の表彰も受けた。工業高校ならではの工夫された練習なども加味され、東海の候補には満場一致で決定した。

金沢商(北信越=石川)

創立110年を超える地元の名門商業高校で、野球部も大正12年夏(石川勢初の甲子園)と昭和41年夏に2回の甲子園出場を果たしている。秋は金沢、星稜の強豪を破って県大会優勝。北信越では初戦で敗れたが、ここ数年は8強常連という安定した成績を残している。野球部員は各種資格取得のため、練習時間を割いて勉学に励んでいる。「金商デパート」と呼ばれる販売実習やボランティア活動などでの地元貢献は計り知れない。北信越は地区大会出場の同校と小諸商(長野)の2校に絞って検討。同じような境遇で、甲乙つけがたかったようだが、県で優勝したことと、近年の安定した成績が決め手となった。

桐蔭(近畿=和歌山)

野球王国和歌山で戦前から活躍してきた名門。和歌山中学時代から積み重ねた甲子園出場は春夏35回。

桐蔭の資料館には戦前からの活躍を物語る品々が並ぶ(2004年撮影)
桐蔭の資料館には戦前からの活躍を物語る品々が並ぶ(2004年撮影)

優勝3回を誇る。全国に15校しかない選手権地方大会第1回からの皆勤校でもある。入学難や練習時間の短さなどで強豪に遅れをとってはいるが、ほぼ毎年、県大会で上位進出を果たしている。秋は準々決勝で箕島に惜敗し、近畿大会出場を逃した。和歌山では、近年、同じ21世紀枠で復活した向陽、海南に先を越された。是が非でもの意気込みで2度目の地区候補に燃える。近畿は、一般枠で選出が絶望的な兵庫の姫路南との比較になり、文武両道の実績や歴史などが上回るということで桐蔭に決まった。

平田(中国=島根)

100年近い歴史を持つ伝統校。秋は島根2位で中国大会に進み、米子東(鳥取)に完封勝ち。準々決勝で宇部商(山口)に敗れた。エースの厚田健人(2年)は防御率1.84と安定している。毎年、部員が何人も国立大に進むなど文武両道として地元の評価が高い。部員が生徒会活動に積極参加しているのも特長で、校内でも中心的役割を果たしている。部員不足、狭いグラウンド、短い練習時間など困難な環境を克服しての好成績は立派。例年同様、5校横一線の選出状況の中、競技力重視で検討した結果、広(広島)と2校で最終比較となり、厚田の投手力に評価が集まって平田で決着した。

松山東(四国=愛媛)

県内最古の歴史を持ち、夏目漱石が教鞭をとったり、「野球」という言葉の生みの親とされる(諸説ある)正岡子規が学んだ。松山中学時代の昭和8年に春夏連続出場。また松山商と合併していた昭和25年夏には優勝している(松山商の優勝回数に参入という説も)。小松との今夏の決勝で力尽きたエース・亀岡優(2年)が新チームでも力投。秋には雪辱し、夏秋連続で愛媛2位。四国大会は初戦敗退したが、名門の活躍に地元は盛り上がっている。四国は困難克服系の推薦校が多い中、最終的には松山東と海部(徳島)の比較になり、昨今の活躍状況や数々の歴史に彩られた伝統の重みが21世紀枠の理念に合致しているとして四国の候補に決まった。

八幡南(九州=福岡)

甲子園経験のある東筑と延長15回0-0の引き分け再試合を制するなど、躍進。優勝候補の呼び声高かった西日本短大付に勝つなど福岡3位で九州大会に出場した。初戦で敗れたが、県大会からの粘り強い戦いぶりは評価が高い。グラウンドが狭く、打撃練習は週に1回しかできない。そんな中、指導者と部員、部員同士が対話を通して教えあい助け合って一体感を築いてきた。公務員試験の合格者数が県下一で、地元へ多くの人材を送り出している。九州は八幡南に加え、鳥栖工(佐賀)、宇土(熊本)、首里(沖縄)の4校で精査。その後八幡南と首里の比較になった。最終的には指導者と部員の距離の近さや甲子園未経験などが決め手になって決着した。

注目すべきは、これまで3校を送り出している宮城と島根が今回も地区候補になったことだ。また近畿は桐蔭に決まり、一般枠での選出が極めて困難な兵庫にとっては辛い結果となった。「プレゼン次第」という前言と矛盾するが、今回はすでにこの段階で西日本に非常に有力な候補がある。「隠し球」のような話題で逆転のプレゼンが聴けるか楽しみにしている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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