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センバツ組み合わせ決定 注目カード続出

森本栄浩毎日放送アナウンサー
対戦相手も決まり、いよいよセンバツのムードも盛り上がってきた

センバツがいよいよ始まる。14日には組み合わせ抽選会が行われ、1回戦の16カードが決定した。センバツは初回の抽選でトーナメントが組まれるため、強豪の揃ったゾーンもあり、激戦は必至だ。初日から展望を。

1日目 履正社に挑む小山台

開幕試合は神村学園(鹿児島)-岩国(山口)の対戦。岩国の柳川は183センチの右腕で力のあるタマを投げる。43年ぶりの中国大会を制した右腕に挑む神村打線は、秋に残塁の多い試合が目だっていた。好機を確実に生かして先手を取りたい。第2試合の福知山成美(京都)と山梨学院大付は実力伯仲。5年前に清峰(長崎)でセンバツ優勝を経験している山梨学院の吉田監督に成美の田所監督はライバル心を見せる。「あのときは2回戦で当たって、ウチの長岡が完璧な投球をしたけど1-0でやられた」と振り返って、「秋に不調だった木村がどこまでやれるか。主将の西田はオープン戦でも調子を上げている。打線のチームと思っているので、看板倒れにならないように」と打線の奮起に期待している。

小山台の伊藤投手(右)が4年連続の履正社に挑む。左は履正社の金岡主将
小山台の伊藤投手(右)が4年連続の履正社に挑む。左は履正社の金岡主将

第3試合は、履正社(大阪)に都立初のセンバツ出場となった小山台(東京)が挑む。出場校中、最も堅実な野球をする履正社を崩すのは至難の業。まずは伊藤投手が踏ん張って接戦に持ち込まないと小山台に勝機は生まれない。ただ履正社は昨年も初戦で完封されたように、エンジンのかかりが遅い。主戦が2年生右腕二人なので、履正社が序盤にもたつくと波乱の可能性も。初日の登場も昨年と同じだ。小山台は先週末、関西遠征をした。「甲子園を全然知らないんで、阪神-巨人のオープン戦も見ました」と福嶋監督。近江(滋賀)との練習試合は雪で中止になったが、「甲子園経験豊富な(近江の)多賀監督から全員で貴重な話を聞かせていただきました」と収穫はあったようだ。ちなみに夏も含め都立は甲子園で勝っておらず、小山台がさらに新しい歴史を築くか。

2日目 ファン待望の池田ー海南

かつての北の王者・駒大苫小牧(北海道)は2年連続出場の創成館(長崎)と。駒苫は傑出した選手はいないが、小技を絡めて得点力は高い。打たせて取る投手陣のため、守りは冬場も雪上ノックで徹底的に鍛えた。創成館も堅守が看板で、3点前後の競り合いか。

健闘を誓い合う池田の三宅主将(左)と海南・矢須主将。名門対決にファンは大喜び
健闘を誓い合う池田の三宅主将(左)と海南・矢須主将。名門対決にファンは大喜び

第2試合は注目の一戦でスタンドが盛り上がるだろう。27年ぶりセンバツの池田(徳島)が21世紀枠の海南(和歌山)と当たる。名門復活の足がかりとなる今大会の初戦としては、お互いに願ってもない相手と言える。池田の名西、海南の岡本、ともに秋はエースが奮起した。両投手の出来がカギを握る。海南の矢須捕手(主将)は、「岡本は秋に比べるとまだまだです」と復調を願う。かつての「やまびこ打線」にはまだまだ及ばないが、打線も含めた総合力では池田がやや上か。日本文理(新潟)と豊川(愛知)も好カード。破壊力抜群の文理打線は、神宮大会決勝の5本塁打で全国を震撼させた。主戦の飯塚が安定してくれば優勝候補に挙がってくる戦力。豊川もエース田中が安定しているだけに、守りから崩れることはないだろう。

3日目 神宮王者の沖縄尚学に巧者・報徳

報徳学園(兵庫)と沖縄尚学も優勝経験のある強豪同士。神宮大会優勝の尚学とはいえ、試合巧者の報徳はいかにもやりにくい相手。昨年は開幕試合で初回に崩れて不本意な試合をしただけに、主戦の山城の立ち上がりに注目。中村、田中の2枚看板に捕手の岸田とつなぐ報徳は、「まとまりはこれまでで一番」と永田監督が一丸野球を掲げる。粘りを発揮できる展開なら報徳にチャンスが。白鴎大足利(栃木)は被災地・気仙沼に学校がある東陵(宮城)と。お互いに打線が粘り強い。関東大会優勝の原動力となった白鴎大足利の大型右腕・比嘉が秋からどれだけ成長しているか楽しみ。東陵の山崎主将は、「地元の皆さんに出場を喜んでいただきました。勝って感謝の気持ちを伝えたい」と健闘を誓う。3日目は栃木勢が連続登場になるが、佐野日大は、全国屈指の左腕・田嶋に注目。速球だけでなく変化球の種類、精度とも並みの投手ではない。秋に打線が低調だった鎮西(熊本)としては、守りで互角に渡り合いたい。

4日目 智弁和歌山ー明徳がいきなり激突

隣県対決となった智弁学園(奈良)-三重は、智弁のスラッガー岡本に、三重の左腕・今井がどう挑むか。岡本の打棒はただ飛ばすだけでなく、柔軟さも持ち合わせた超高校級。場合によっては勝負を避けるという選択も必要になってくる。岡本は投手としても大器で、今大会の最注目選手である。関東一(東京)と美里工(沖縄)もハイレベルな熱戦が期待できる。伊波、長嶺の両輪に左腕の島袋も成長している美里工は、沖縄尚学とも公式戦1勝1敗の強チーム。関東一も阿部、羽毛田と左右の好投手を擁し投手力は遜色ないが、打線はパワーでやや劣る。3点前後の締まった試合になるだろう。

3回目の甲子園となる明徳の岸投手(右)は智弁和歌山の長主将とがっちり握手
3回目の甲子園となる明徳の岸投手(右)は智弁和歌山の長主将とがっちり握手

そして智弁和歌山と明徳義塾(高知)は優勝争いを左右する1回戦最高のカード。今大会出場選手中、最も甲子園経験のある明徳のエース・岸と智弁和歌山の強力打線がぶつかる。昨夏、大阪桐蔭打線を1点に抑えて実力を証明している岸が万全なら、いかに強打の智弁和歌山と言えども攻略は容易でない。岸の出来次第ではあるが、中盤まで明徳ペースで進む可能性が高い。ただ、智弁和歌山の各選手は適応力が高いので、終盤、一気に打線が爆発することも考えられる。そのためには智弁投手陣が踏ん張って、失点を食い止めることが肝心。高嶋監督の投手起用もポイントになる。

5、6日目 古豪・平安に大島が挑戦

初出場ながら広島新庄は今大会のダークホースと見ている。エース山岡の安定感と攻守にまとまりのあるチーム力は初出場のそれではない。初戦を突破すれば勢いに乗りそう。対する東海大三(長野)も主戦の高井が制球よく打たせて取るタイプで、守りは堅い。四国王者の今治西(愛媛)は2年生中心の桐生第一(群馬)と。四国大会で明徳を完封している左腕・神野が本領を発揮すれば今治西のペースになる。桐生一はしっかり守って食らいつきたい。21世紀枠で奄美群島から初の甲子園となった大島(鹿児島)は春夏70回目という古豪の龍谷大平安(京都)に挑む。近畿王者・平安の優位は揺るがないが、大島の全員野球も侮れない。「奄美がそれこそ一丸となってぶつかってくるでしょう。ウチにとってそれが一番怖い」と平安の原田監督も気を引き締めている。最後の登場になる横浜(神奈川)と八戸学院光星(青森)も興味深い。昨夏のレギュラー8人が残る横浜が経験で上回るが、北條が牽引する光星打線もかなりのレベル。横浜のエース左腕・伊藤は立ち上がりに苦しむことが多かっただけに、序盤で一気に崩されると横浜も苦戦を免れない。

4強はどこに?

32校を4つのゾーンに分けて4強を占う。

全体的には右側のゾーンに強豪が集中した
全体的には右側のゾーンに強豪が集中した

神村学園から創成館までのゾーンでは、履正社の安定感が傑出している。履正社はこれまでから堅実な野球で大崩れしなかったが、相手ペースの試合を覆す爆発力に欠けていた。このゾーンには力勝負で履正社を上回れるチームがなく、2年生投手陣の不調さえなければ崩れることは考えにくい。追うのは福知山成美で、左腕の石原が安定している。池田から東陵のゾーンは日本文理と沖縄尚学の神宮大会2強に報徳学園が激しく争う。打線の長打力は文理だが、厳冬での調整不足が懸念材料。初戦の豊川は楽な相手ではない。沖縄尚学も初戦がカギで、報徳の巧さにしてやられる可能性も少なくない。ここには関東王者の白鴎大足利もいてかなりの激戦ゾーンだ。鎮西から明徳義塾までのゾーンは最激戦。智弁和歌山と明徳の勝者が一番手になるが、次戦も投手のいい美里工か関東一で気が抜けない。さらに今大会ナンバーワン左腕のいる佐野日大に最強スラッガーを擁する智弁学園と、どのチームが勝ち上がっても不思議ではない。力を持ったチームは多いが、消耗少なく抜け出すのは困難な厳しいゾーンになった。最後の広島新庄から八戸学院光星までのゾーンは、2回戦で対戦が予想される龍谷大平安と横浜がしのぎを削る。「寒い日が多くて調整が遅れているので、日程的には助かります」と平安の原田監督は遅い登場を歓迎していたが、左腕・高橋、中田ら投手陣の出来には確信を持てていない様子。横浜は初戦も楽ではなく、投手が伊藤一人に頼ることになりそうで、日程が詰まってくる終盤戦を考えると打線の援護は欠かせない。またこのゾーンは広島新庄が不気味で、虎視眈々と上位を狙う。どのチームも秋からは大きく変貌している。秋の戦力を維持できていないチームも例年かなりあるわけだから、有力校があっさり敗退することも珍しくない。センバツを勝ち抜くには、技術だけでなく、連戦に耐えうる体力、精神力が重要になってくる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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