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発達する危険な台風11号。影響は広範囲、長期間に。

森朗気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
日本の南を西に進んでいる台風11号(画像提供:ウェザーマップ)

8月28日の午後に発生した台風11号は、発達しながら西に進み、29日の夜には小笠原諸島を通過、父島では最大瞬間風速48.4m/sを観測した。これは8月としては最も強く、通年でも9位の記録となる強さだ。

台風11号は今後さらに西に進んだ後、今度は南寄りに進路を変えて、沖縄の南海上まで進んで動きが遅くなり、その間に一段と発達する見込みだ。そして、2日金曜日以降は徐々に北上してくる予想となっている。まだ2日金曜日以降の予報円が大きく、いつどこに進んでくるかは断定できないものの、大まかな流れは、今のところこのような動きになるのではないかと思われる。

画像提供:ウェザーマップ 8月30日正午の予想。台風進路図は最新のものを確認してください。
画像提供:ウェザーマップ 8月30日正午の予想。台風進路図は最新のものを確認してください。

台風としては変わった動きだ。台風11号が発生したのは小笠原諸島の東海上だが、さらにその東には優勢な太平洋高気圧があった。台風は高気圧の縁を進むことが多いため、そのまま日本の東海上に進んでもよさそうなものだったが、台風が発達したために、その北側で高気圧が強まり(台風の強い上昇気流が周辺の高気圧に下降気流をもたらす循環が引き起こされるため)、台風11号は西に流された。さらに、その南海上には、今日になって解析された熱帯低気圧がある。その反時計回りの渦流に乗って、台風は沖縄の南海上まで運ばれる。沖縄の近海の海面水温は30度以上の高さで、しかもこの海域の上空の空気は非常に湿っている。また台風の左右対称な発達を妨げるような風も吹いていない。このため台風11号はさらに発達して、おそらく沖縄近海で発達のピークを迎えることになるだろう。台風11号と熱帯低気圧の力関係は逆転、台風11号がその場に止まり、熱帯低気圧あるいは熱帯低気圧を構成していた雨雲が台風11号の風に乗って北上してくるので、西日本の太平洋側では台風の北上に先立って大雨に見舞われるかもしれない。

筆者作成
筆者作成

その後、台風11号が北上してくるのだが、いつどこを通って北上してくるのか、まだ断定はできない。しかし、台風の東側に当たる九州や中国、四国地方では大荒れになるおそれがあるし、秋雨前線が横たわっている北日本も、台風11号が通過するまでは断続的に大雨になるおそれがある。もしも台風11号が東寄りのコースを辿れば、東日本も暴風雨に見舞われるかもしれない。いずれにせよ、台風が北上を始めるのはこの週末だ。沖縄では数日間大荒れの天気となるし、来週の半ば、あるいは後半にかけても、広範囲で大雨や暴風などのおそれがある。

今年は台風の発生数も少なく、またほとんどの台風が発達していない。しかし、今度はかなり発達した台風の襲来だ。秋雨前線の影響もあり、台風から離れた場所でも大雨のおそれがある。しかも、その状態が来週の半ばまで続くかもしれない。すでに台風が近づいている沖縄では厳重な警戒を。そして、まだ台風から遠い場所でも、今のうちに台風や大雨への備えをしておいた方がいい。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

1959年生まれ。1995年に気象予報士の資格を取得、株式会社ウェザーマップに入社。TBS テレビ気象キャスターなど。湘南と沖縄(八重山)とブラジル音楽が好き。

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