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用水確保の後は内水氾濫も心配

森朗気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
2021年7月1日の衛星画像。画像提供:ウェザーマップ

矢作川明治用水の大規模な漏水の影響で、工業用水や農業用水の確保に影響が出ているが、この漏水の原因がもしも経年劣化によるパイピング現象だとすると、心配になるのが今後の内水氾濫の可能性だ。今回の漏水は、堰の上流側の水圧の上昇によって、堰の下の地盤に河川水が浸透し、土砂が流動化して水の通り道ができ、河川水が堰の下の地中を通って上流から下流へ流れ出したことが原因と見られている。こうしたパイピング現象は、河川の堤防でも起こるおそれがある。大雨などで河川が増水すると、川床が洗掘されると同時に、河川水の圧力が増すために堤防内部に水が浸透し、堤防の基礎部が破壊される可能性がある。すると、堤防の外側に漏水する内水氾濫が発生する危険があるし、最悪の場合堤防そのものが弱体化して、決壊を引き起こす可能性もある。

筆者作成
筆者作成

矢作川の流域の断面を調べてみると、今回漏水が発生した明治用水頭首工付近では、川の両岸の標高が高くなっているが、下流に行くほど低地が広がり、一部ではほとんど標高差がない所、川床よりも土地が低くなっている所もある。

国土地理院地図より筆者作成
国土地理院地図より筆者作成

矢作川は、これまでも豪雨の際にたびたび水害に見舞われているため、現在も堤防の嵩上げや増築を推進しているが、万一の豪雨の際に、上流の堰で起きたようなパイピング現象が下流の堤防で発生すると、浸水や洪水の発生が心配だ。矢作川の流域に限らず、日本には築堤からかなりの年数を経た河川も数多い。大雨の時期を前に、ぜひハザードマップで浸水や洪水のリスクを確認しておいた方がいい。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

1959年生まれ。1995年に気象予報士の資格を取得、株式会社ウェザーマップに入社。TBS テレビ気象キャスターなど。湘南と沖縄(八重山)とブラジル音楽が好き。

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