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コスパもタイパも関係なし!全候補者取材が信条の選挙取材歴25年超えライターに出会って

水上賢治映画ライター
「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影

 「なぜ君は総理大臣になれないのか」にひっかけるわけではないが、「なぜ君は選挙へ行かないのか?」「なぜ君は選挙に無関心なのか?」。

 そう問うのが、ドキュメンタリー映画「NO 選挙,NO LIFE」といっていいかもしれない。

 実は、「選挙」には、筋書のないドラマ以上にドラマティックで、そう簡単には目にできない人間の心からの喜怒哀楽が詰まっている。フリーランスライター・畠山理仁氏の選挙取材を追った本作は、そのことを物語る。

 でも、実際の選挙の現実はどうだろうか?

 「選挙」について、「関心がある」と答える人は、いまの日本にどれぐらいいるのか。

 正直、「関心はない」というのが現実ではなかろうか。

 その現実を表すように、投票率の低下が言われて久しい。政治への無関心もよく聞く話である。

 投票の時間の延長や期日前投票、選挙年齢の引き下げなどが実施されてはいるが、いずれも投票率のアップにはつながっていない。

 それが日本の実情だろう。

 しかし、選挙がこのままでいいのか、関心を寄せなくていいのか、その結果、いま政治はどうなっているのか?

 そのこともまた「NO 選挙,NO LIFE」は物語る。

 選挙取材歴25年を超える畠山氏を通して、何を見て、何を考えたのか?

 「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」「劇場版 センキョナンデス」「国葬の日」ではプロデューサーとして手腕を振るった前田亜紀監督に訊く。全七回。

「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影
「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影

畠山氏との出会いは、「なぜ君」の試写会でのこと

 はじめに本作の主人公となる畠山理仁氏は、国政から地方選、海外まで取材してきたフリーランスライター。

 選挙取材歴は25年を超え、著書に第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」がある。

 彼との出会いをこう振り返る。

「畠山さんとの出会いは、『なぜ君は総理大臣になれないのか』の試写会でのことでした。

 コロナ禍の緊急事態宣言下と重なり、ほぼほぼ試写会ができなくなっていたんですけど、最後の最後に1回だけできた回があって、そこにふらりと現れたんです。

 実は、その時点では、畠山さんのことは詳しく存じ上げていなかった。

 Twitter(現X)で、選挙についてよく発信している人といったぐらいの認識だったんです。

 で、実は試写会にお呼びもしていなかった。

 つまりわたしたちがお声をかけて呼んだわけではなかったんですけど(苦笑)、作品についてのコメントをお願いした方と畠山さんがお知り合いで、『見た方がいい』と伝えられたようで、試写会に来られたんです。

 なので、初めてお会いしたときは挨拶をした程度。

 特になにかをお話しすることはありませんでした。

 その後、少しして、著書の『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』を手にしました」

「NO 選挙,NO LIFE」より
「NO 選挙,NO LIFE」より

いつか畠山さんの見ている選挙戦を見てみたい。

畠山さんの肩越しにカメラを置くことはできないか

 「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」を読み、畠山氏に興味をもったという。

「本を読んで、すごく感動しました。

 『なぜ君は総理大臣になれないのか』や『香川1区』などでプロデューサーを務めましたが、わたしはそれまでむちゃくちゃ政治に興味があったかというとまったくそういうことはありませんでした。

 大島(新)さんの作品を手伝う中で、政治の世界を垣間見て、選挙戦を実際に体感して、そこでどれほどドラマティックなことが起きているのか、勝てば天国、負ければ地獄の命がけの戦いが繰り広げられているを始めて知ったんです。

 そこから選挙の見方も変わったし、政治家の見方も変わりました。

 ただ、『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』を読んで、自分が見てきたものとは違う風景があることに気づかされました。

 わたしが『なぜ君』などでみた選挙は、与野党一騎討ちの構図で、当選するか落選するかの瀬戸際にいる、選挙戦において『主要候補』とされる人たちの戦い。で、世間の注目もそこに集中するわけです。

 でも、畠山さんが取材しているのは、そこだけではない。いわゆる泡沫候補と呼ばれる人たち、本のタイトルに入っているように『無頼系独立候補』までを追って取材している。

 本を読んで、同じ選挙という枠組みの中で、まったく別の戦いをしている人たちがこんなにもいるのかとびっくりしましたし、それを取りこぼすことなくくまなく話をきいている畠山さんの取材スタンスにも驚かされました。

 そして、いつか畠山さんの見ている選挙戦を見てみたい。畠山さんの肩越しにカメラを置くことはできないかと考えました」

(※第二回に続く)

「NO 選挙,NO LIFE」ポスタービジュアル
「NO 選挙,NO LIFE」ポスタービジュアル

「NO 選挙,NO LIFE」

監督:前田亜紀

プロデューサー:大島新

公式サイト:https://nosenkyo.jp/#

ポレポレ東中野ほか全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)ネツゲン

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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