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学校卒業のための「宿題」が始まり。各国映画祭で大反響!本国で大ヒットした異例の学生映画とは?

水上賢治映画ライター
「宇宙探索編集部」より

 現在からさかのぼること30年前、本国・中国で巻き起こった宇宙ブームにのって人気を集めたUFO雑誌「宇宙探索」。

 でも、ブームはとうに去り、かつての人気はいまや見る影もなく、かつて若き編集長ともてはやされたタンは廃刊の危機に直面していた。

 そんな折、彼は中国西部の村に宇宙人が出現したという情報をキャッチ。

 宇宙人の存在を信じて疑わないタンは、仲間とともに現地へ向かい、予想もしない事態に遭遇する!

 こんな物語が展開するのが、映画「宇宙探索編集部」だ。

 このストーリーを前にすると、なにやらB級テイストのSFストーリーを想像してしまうかもしれない。

 確かに、宇宙人にのめりこみ過ぎてしまった男と彼になんとなく付き合い続けている仲間たちが、宇宙人を探す旅で珍道中を繰り広げるというユーモア満載の物語。

 ところが喜劇と思いきや、そこで終わらない。どこからか夢を諦めない人間へエールを送るヒューマン・ドラマとなり、最後は感動的な父と娘の愛情物語へとつながっていく。

 北京国際映画祭、香港国際映画祭、大阪アジアン映画祭などで大きな反響を呼んだことがうなずける、映画ならではのマジカルな魅力が満載の一作になっている。

 しかも、大学院の卒業制作として発表されたというのだからなお驚かされる。

 初の長編映画となる本作で一躍注目を集めることとなった中国の新鋭、コン・ダーシャン監督に訊く。全六回。

「宇宙探索編集部」のコン・ダーシャン監督  筆者撮影
「宇宙探索編集部」のコン・ダーシャン監督  筆者撮影

卒業するときに必ず長編映画を1本作って提出しなければならなかったんです

 はじめに訊きたいのは、やはり大学院の卒業制作作品として本作は始まっていることだ。

 どのようにして始まったのだろうか?

「僕は北京電影学院大学院監督学科の大学院生だったのですが、卒業するときに必ず長編映画を1本作って提出しなければならなかったんです。いわゆる卒業修了作品を作らなければならなかった。

 この卒業作品ですが、最低でも75分、できれば85分以上の作品という尺の規定があるぐらい。

 あとは一切不問で、テーマもジャンルもすべて自由で自分で好きな題材を選んでいい。

 たとえば、脚本のコースの学生に関しては、オリジナルのストーリーを書き上げなければならない。でも、が在院していた監督学科の学生に関しては、オリジナルである必要はない。文芸作品をもとにしても、既存の脚本に取り組んでもOKでした」

最初に提出したアイデアは見事に却下!

 こうして卒業前に、監督曰く大学院の「最後の宿題」として作品の構想を練り始めたという。

「どんな映画を撮ろうかいろいろと考え始めました。

 その中で、恥ずかしながら、最初に提出したアイデアは見事に却下されてしまったんです(苦笑)。

 今回の『宇宙探索編集部』のエグゼクティブ・プロデューサーを務めてくださっているワン・ホンウェイさんが、大学院の副教授で。

 最初に構想した作品について話したんですけど、なにからなにまでダメだと、完全にNGを出されてしまった(苦笑)。

 確かにショックだったんですけど、よく考えるとワン・ホンウェイさんの指摘は納得で。

 自分もあとで考えたんですけど、自分が最初に出したアイデアというのは、同じような内容の作品がほかにもいっぱい確かにあるんです。

 だから、いまは却下されても当然だったなと納得しています」

「宇宙探索編集部」より
「宇宙探索編集部」より

たまたま目にした宇宙人を捕まえたと主張する男性のニュースがはじまり

 そこで再考して生まれたのが、今回の作品のアイデアだった。

「新たな物語を探し始めたのですが、あるとき、テレビを見ていて目にしたニュースがありました。

 それが、今回の映画でそのまま取り入れていますけど、ある村の住民が『宇宙人を捕まえたので、ぜひ取材に来てほしい』と言って、マスメディアが彼のところへ取材に行く。すると彼が見せてくれたのは、『冷凍庫の中に保管された宇宙人の形をしたシリコンのおもちゃだった』というニュースでした。

 たぶん『なーんだ』と呆れる類のニュースだと思うんですけど、僕はものすごく興味がわきました。

 何に興味を覚えたかというと、宇宙人を捕まえたと主張する男性です。

 記者を前に、彼は宇宙人を捕まえたいきさつを語っていたのですが、その姿というのが真剣そのもの。

 言葉のひとつひとつに真実味があって、他人をだまそうとか、嘘をついているように到底思えない。

 あり得ないことを真面目に誠実に語っていて、すごく心に残りました。

 それがすごく興味深くて、このニュースをひとつの切り口にアイデアを膨らませていって、現在の作品の骨格になるような概要ができました。

 で、すぐに再びワン・ホンウェイ先生にアイデアを話しました。すると今度はすごく喜んでくれて。

 『このアイデアはすばらしいし新しい』とおっしゃってくれました。

 こうして今回の作品は始まりました」

(※第二回に続く)

「宇宙探索編集部」ポスタービジュアル
「宇宙探索編集部」ポスタービジュアル

「宇宙探索編集部」

監督:コン・ダーシャン

出演:ヤン・ハオユー、アイ・リーヤー、ワン・イートン、ジャン・チーミン、

ション・チェンチェンほか

公式サイト:https://moviola.jp/uchutansaku/

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)G!FILM STUDIO[BEIJING]Co.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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