SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。

　「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。

　いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。

　バイプレイヤーとしてしっかりと作品にスパイスを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。

　映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が組まれることになった。

　横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品（？）まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。

　開催を前に、本人に話を訊いた。全三回。

再び自身の特集上映が組まれるとは考えていなかった

　前回（第一回はこちら）は、８年前に開催された１回目の特集を主に振り返ってもらった。

　そして、８年ぶりに開催の受け止めに関して、前回同様に「果たしてお客さんが来てくれるのか？」と不安になる一方、少し開き直って「役者としてのわたしを支持してくださるマニアックなみなさん集まって盛り上がろう！そして、わたしをまた勇気づけて、元気づけてください！」という気持ちもあると偽らざる心境を明かしてくれた。

　では、改めて８年ぶりの特集上映の打診を始めに受けたときの心境はどのようなものだったのだろう？

「正直びっくりしました。まさか８年後に再び自分の特集上映をする日がくるというのは考えていなかったですから。

　（こういった特集は）自分が望んだからといってできることではない。また、誰かが望んでくれないとできないものでもある。

　『また、やってくださるんですか？』といった感じでした。

　ですから、純粋にうれしかったんですけど、その喜びは後になってじわじわと実感したところがありました。

　というのも、８年ぶりと聞いて改めて振り返ると、まず曲がりなりにもあれから８年、役者を続けれらたんだなと思いました。

　そして、その間、いろいろな作品に携わることができたからこそ、たぶん今回の特集の話がきたんだなと思うんです。

　この間、何もなかったら、当然、今回のお話をいただくことはなかったでしょう。

　そう考えると感無量というか。素直に、この８年間、自分はいろいろと恵まれて、いいキャリアを重ねられたのかなと思ったんです。

　わたしの中には、デビューして演じる楽しさを知ったときから、『この仕事をずっと続けていけたら』いう気持ちがあります。

　でも、自分がいくら望んだとしても、演じる機会がなければそれは叶わない。

　自分が役者をいくら続けたいと思っていても、周りから求められないと続けようにも続けられない。

　だから、いまも『わたしはこの仕事をこの先続けていけるのだろうか？』という不安がぬぐえない。

　この不安は、おそらく一生つきまとうのだろうなと自分では思っている。

　でも、この８年は少なくとも役者を続けることができた。いろいろな作品でいろいろな役を演じることができた。

　そう考えると、『役者をずっと続ける』という自分の目標に一歩近づいた気がして、じわじわと喜びの気持ちをかみしめたところがありました」

自分でも「こんな役から、こんな役まで』と実感するラインナップ

　では、今回の全12作品のラインナップを本人はどう考えているだろうか？

「近年の作品もありますけど、すべて通すと、わたしのキャリアを振り返ることができる、かつ、もうバラエティに富んだと言いますか。まだ初々しいころ（？）のわたしに出会える作品から、足だけの出演になったカルト作品まで揃ったなと（苦笑）。

　自分でも『こんな役から、こんな役まで演じてきたんだ』と実感するラインナップになりましたね。

　なかなかスクリーンで見る機会のない昔の作品もあるので、みなさんに喜んでいただけるプログラムが組めたかなと思っています。

　いずれにしてもわたしとしては、自分の出演した作品を再びスクリーンで上映できる機会に恵まれたことに深く深く感謝しています」

わたしが役者としてここまで続けてこられたのは、

今回ご登壇いただく方々を含めた監督たちの存在があったからこそ

　その上映では、12作品の監督全員がトークイベントに登壇することが決定した。

「ありがたいことです。

　ほんとうに、もう何年もお会いしていない監督さんもいらっしゃるんですけど、今回、駆けつけてくれることになりました。

　まさか全員の監督が来てくださるとは思っていなかったので、みなさんには感謝しています。

　わたしが役者としてここまで続けてこられたのは、今回ご登壇いただく方々を含めた監督たちの存在があったからこそ。

　様々な監督とご縁があって、いろいろな現場を経験させていただいて、時に助言を、時に励ましの言葉をいただき、ここまで続けられてきたところがあります。

　どういうエピソードがでるかわからないですけど、それぞれの監督といろいろとお話する機会にしたいなと思っています」

（※第三回に続く）

【＜女優 菜 葉 菜 特集＞菜葉菜インタビュー第一回はこちら】

＜女優 菜 葉 菜 特集＞

「ハッピーエンド」（2008 年／山田篤宏監督）

「どんづまり便器」（2011 年／小栗はるひ監督）

「百合子、ダスヴィダーニヤ」（2011 年／浜野佐知監督）

「雪子さんの足音」（2019 年／浜野佐知監督）

「モルエラニの霧の中」（2020 年／坪川拓史監督）

「赤い雪」（2019 年／甲斐さやか監督）

「夕方のおともだち」（2021 年／廣木隆一監督）

「夜を走る」（2021 年／佐向大監督）

「TOCKA［タスカー］」（2022 年／鎌田義孝監督）

「鋼－はがね－」※オムニバス『コワイ女』より（2006 年／鈴木卓爾監督）

「ワタシの中の彼女」（2022 年／中村真夕監督）

「ヘヴンズストーリー」（2010 年／瀬々敬久監督）

以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映！

開催期間：9月16日(土)～10月1日(日）

横浜・シネマノヴェチェント

詳細は劇場公式サイトへ　→　https://cinema1900.wixsite.com/home