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障がいのあった男が最期に遺したセックスの記録を映画に。それから1年、再び最後の恋人役にめぐり逢って

水上賢治映画ライター
「月は夜をゆく子のために」に出演する毛利悟巳   筆者撮影

 四肢軟骨無形成症という障がいのあった池田英彦が最期の遺したプライベートなセックスの記録を映画にした「愛について語るときにイケダの語ること」。

 ガンで余命宣告を受け、「今までやれなかったことをやりたい」と、イケダはいわゆる「ハメ撮り」を始めることに。

 この自らの性の記録を主演映画にして遺したいと願った彼の思いが結実して完成した本作は異例の反響を呼び、1年にわたってのロングラン公開となった。

 それに合わせ、撮影・脚本・プロデュースを担当した脚本家の真野勝成、共同プロデューサー・構成・編集を担当した映画監督の佐々木誠、そして出演者の毛利悟巳のインタビューを掲載した。

 その中で、映画を見た方はご存知だと思うが、女優の毛利は本作においてキーパーソン。

 「普通のデートがしたい」というイケダの最後の願いを叶えるためにキャスティングされた彼女は恋人役となり、予想もしない形でイケダの偽らざる本心を引き出すことになる。

 映画の中とはいえ、余命僅かの男性の最後の恋人役は重責で「中途半端な気持ちでは引き受けられない。池田さんのすべてを受け容れる気持ちで臨んだ」と語った毛利だが、偶然なのか必然なのか、劇場公開から1年を経て、「イケダ」を思い起こす作品と役に巡り合った。

 それが10月から始まる舞台「月は夜をゆく子のために」だ。

 Wキャストで主演を務める彼女に訊く。(全三回)

「月は夜をゆく子のために」に出演する毛利悟巳   筆者撮影
「月は夜をゆく子のために」に出演する毛利悟巳   筆者撮影

古い時代の戯曲を今上演するときに、どういう翻訳がいいのかを考え続ける。

「トランスレーション・マターズ」の試み

 ここまで今回の戯曲について、演じるジョジーについて訊いてきた。

 そして、もうひとつ今回の舞台には注目してほしい点がある。

 それは本公演は、「トランスレーション・マターズ」の上演プロジェクトであることだ。

 「トランスレーション・マターズ」は、戯曲翻訳者による企画の発信・実現を目的として、小川絵梨子、常田景子、小田島創志、広田敦郎、小山ゆうな、高田曜子、代表の木内宏昌が理事として名を連ねる団体。昨年6月の設立から、翻訳研究会やトークセッションなどを行ってきた彼らが、近代古典戯曲の新訳に取り組む上演プロジェクトの第一弾が今回の「月は夜をゆく子のために」になる。

「(海外作品の)映画も字幕翻訳がひじょうに大切ですけど、それは舞台も同じで。

 原作が良くても翻訳が時代に合ってないと、伝わるものも伝わらない。

 古い時代の戯曲を今上演するというときに、どういう翻訳がいいのかを考え続ける。

 『トランスレーション・マターズ』のみなさんがやろうとしているのはまさにそういうことで。

 もともとの戯曲を大切にしながら、いまの私たちの言葉で語るものになっているんですね。

 演じ手としても、言葉ひとつ、セリフひとつで、表現の仕方がまったくかわってくる。

 だから、ほんとうに翻訳って大切なんです。

 今回の『月は夜をゆく子のために』も最初は古典ということで、果たしていまの時代に通じるところがあるのかと、『構えたところがあった』といった主旨のことを前にお話ししましたけど、脚本を前にしたら、いま出会えてよかったと思える言葉がいっぱいある。

 いまという時代を生きるわたしに響いてくる言葉やセリフがちりばめられていて、もちろん時代設定はずいぶん前になるんですけど、いまに届く物語に驚くほどなっていた。

 これは今回の舞台の翻訳・演出を手掛けられている木内宏昌さんの新訳によるところが大きいとわたしは思います。

 この『トランスレーション・マターズ』の試みにも注目していただけたらうれしいです」

「月は夜をゆく子のために」メインビジュアル
「月は夜をゆく子のために」メインビジュアル

これだけテンションのアップダウンがある舞台はなかなかないかも

 舞台は生で見てこそ。そのライブの瞬間、幕が開けるときを楽しみにしてほしいが、少しだけ詳細を明かすとこんな舞台になりそうとのことだ。

「ひとつ言えるのは、ものすごく言葉が飛び交う会話劇であること。

 しかも、瞬時に登場人物の表情や感情も、物語の様相もガラッと豹変するような舞台なんです。

 大笑いしながらセリフを言ったら、次のセリフでは大泣きしているみたいな、もう物語の展開も激しければ人物たちの感情の起伏も激しい(苦笑)。

 これだけテンションのアップダウンがある舞台はなかなかないと思います。

 演じる身としては、なにか自分の中にあるあらゆる感情をすべて出し尽すような感覚があります」

「月は夜をゆく子のために」に出演する毛利悟巳   筆者撮影
「月は夜をゆく子のために」に出演する毛利悟巳   筆者撮影

死を覚悟した人間は最後にどんなことを思うのか、

生と死について深く考えさせられる

 この舞台を通してこんなことを感じているという。

「映画『愛について語るときにイケダの語ること』で池田さんの最期の恋人役を演じることになって、そして今回の舞台『月は夜をゆく子のために』で再び死を前にした男性が最後に心を寄せた女性を演じている。

 なぜ、こうも死を前にした人が最後に愛する人物が自分のところにめぐってくるのか、自分ではもう『なぜなんでしょう』といった感じでわからない(笑)。

 ただの偶然かもしれないですけど、縁を感じずにはいられない。

 『愛について語るときにイケダの語ること』があったから、池田さんと出会ったから、この舞台、このジョジーという役に巡り合えた気がするんです。

 ですから、いま改めて池田さんに感謝しています。

 と同時に『愛について語るときにイケダの語ること』のときもそうだったのですが、今回の舞台『 月は夜をゆく子のために』に関しても、死を覚悟した人間は最後にどんなことを思うのか、生と死について深く考えさせられる。

 自分はどう生きたいのか、これからどういう道を歩んでいきたいのか?

 そういった生と死と真剣に向き合うことで、自分自身を現在地を見つめるとともに、これから先を考えるような舞台になるのではないかと思っています。

 大切な人への想い、自分の生き方など、さまざまなメッセージが詰まった舞台なので、ひとりでも多くの方に見てもらえたらと思っています」

【毛利悟巳「月は夜をゆく子のために」第一回インタビューはこちら】

【毛利悟巳「月は夜をゆく子のために」第二回インタビューはこちら】

「月は夜をゆく子のために」ポスタービジュアル
「月は夜をゆく子のために」ポスタービジュアル

<トランスレーション・マターズ上演プロジェクト2022>

「月は夜をゆく子のために」

作/ユージーン・オニール

翻訳・演出/木内宏昌

出演:まりゑ / 毛利悟巳(Wキャスト) / 内藤栄一 / 大城清貴 /

小倉卓/ 大高洋夫

公演日:10月8日(土)〜19(水)

会場:すみだパークシアター倉

【公演スケジュール】

10月 8日(土)18:30(悟巳ジョジー)

10月 9日(日)13:30(悟巳ジョジー)

10月10日(月・祝)13:30(悟巳ジョジー)

10月11日(火)18:30(悟巳ジョジー)

10月12日(水)休演

10月13日(木)18:30(まりゑジョジー)

10月14日(金)18:30(まりゑジョジー)

10月15日(土)13:30(悟巳ジョジー)/18:30(まりゑジョジー)

10月16日(日)18:30(まりゑジョジー)

10月17日(月)18:30(まりゑジョジー)

10月18日(火)13:30(まりゑジョジー)/18:30(悟巳ジョジー)

10月19日(水)13:30(まりゑジョジー)

※開場は、開演の30分前

チケット:一般/6,600 円(前売・当日共)

学生割引券/1,000 円(チケットぴあ前売のみ取扱/枚数限定)

★WEB予約・電話予約 どちらでも受付可★

チケットぴあ https://w.pia.jp/t/translation-moon/

セブンイレブン店頭マルチコピー機(P コード:514-542)

カンフェティ https://www.confetti-web.com/translation-matters

0120-240-540(受付時間 平日10:00~18:00)

通話料無料・オペレーター対応

そのほか詳しくは、公式サイトへ

https://translation-matters.or.jp/production_01_moon.html

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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