10代の女の子たちがこんな想像を絶する状況に…。沖縄戦の事実を語り継ぐ女子学徒と向き合って
太平洋戦争末期の沖縄戦では20万人以上が犠牲になったとされている。
その沖縄戦の悲劇を伝える存在として広く知られる「ひめゆり学徒」。
しかし、ご存知の方もいると思うが、沖縄戦において看護学徒として動員された10代の女学生たちは、映画、テレビドラマ、舞台として幾度となくリメイクされている「ひめゆりの塔」のモデルとなっているひめゆり学徒隊だけではない。
映画「乙女たちの沖縄戦~白梅学徒の記録~」は、ひめゆりらと同じ学徒のひとつ、沖縄県立第二高等女学校の4年生56名で編成された白梅学徒に焦点を当てる。
沖縄戦において看護学徒として野戦病院に配属され、負傷した兵士たちの看護に命懸けで当たった彼女たちの実話をドキュメンタリーと再現ドラマで描く。
再現ドラマに出演するとともにドキュメンタリーパートで、今も存命の白梅学徒だった二人にインタビューを試みた女優の森田朋依に訊く。(全三回)
戦争があった地という目で沖縄を見たことはそれまではなかった
はじめに本作に関わる以前の沖縄のイメージについて彼女はこう明かす。
「撮影で何度か沖縄にはいった事がありましたけど、やはり美しい海辺のリゾートというのが正直なわたしの中でのイメージで。
戦争があった地という目で見たことはそれまではなかったです。
もちろん太平洋戦争時、大変な激戦地になったことは知っていました。いまも多くの基地を抱えて、いろいろと問題があることも知ってはいました。
ただ、お恥ずかしながら、そこまで深く実情は知らなかったし、沖縄戦でどんなことがあったのかも知りませんでした。
ですから、今回の作品で、いろいろなことを知ってショックだったし、いままで知らないできてしまったことをものすごく反省しました」
詳細を知ることなく、ほんとうに飛び込んだ感じでした
出演が突然決まったこともあって、ドキュメンタリーパートの撮影はほとんど下準備ができないで現地に向かったという。
「さすがにお相手の方にも失礼に当たるので、ちょっと準備の時間がと思ったのですが、太田監督は(体験者ご本人が一から話す肉声を映像に収めたかったため)『あまり準備はしなくていい』『なるべく前情報を入れないで、ある種、まっさらな気持ちで、これからお話しを聞く方であったり、訪れる場所と向き合ってほしい』といった主旨のことを言われて……。
あまりどういうことをするのか詳細を知ることなく、ほんとうに飛び込んだ感じでした」
こんなにも多くの10代の女の子たちがこんな過酷な状況に置かれていたのか
とはいえ、太田監督からはいくつか手渡されたものがあったという。
「まず、太田監督の前作に当たる『ドキュメンタリー沖縄戦〜知られざる悲しみの記憶〜』を渡されて、これは観といてほしいと。
それから、資料ということで、白梅学徒について書かれた『平和への道しるべ 白梅学徒看護隊の記録』と『白梅の碑』という漫画を渡されて、目を通してほしいと伝えられました。
正直なことを言うと、太田監督に『白梅学徒の』といわれたとき、『ひめゆりの間違いでは?』と思ったぐらいで、白梅学徒のことはまったく知らなかったんです。
ただ、映画の中でも触れていますけど、太田監督自身も前作の取材を始めるまで白梅学徒の存在を知らなかった。
あれだけ沖縄戦の事実に迫った『ドキュメンタリー沖縄戦〜知られざる悲しみの記憶〜』を作った太田監督さえ、前作の映画制作を通して、白梅学徒のことを初めて知ったという。
それぐらいあまり世間一般に知られていない。
でも、この2冊の本を読んだら、もう衝撃的な内容で。『こんなにも多くの10代の女の子たちがこんな過酷な状況に置かれていたのか』と思うと、胸がひどく痛みました。
こういうことがあったことが自分も含めてあまり知られていないことがショックで。このことを伝える作品にわたしは携わる。しっかりと向き合わないとと思いました」
こうして取材が始まることになり、元白梅学徒の中山きくさんと武村豊さんと直接会って話をきくこと、野戦病院の跡地である病院壕などへも行くことが告げられたという。
「ほんとうにお会いする前は緊張しました。
太田監督には『自分が聞きたいと思ったことを、素直に聞けばいい』と言われたんですけど、お二人は、それこそわたしの想像を絶する体験をされている。
そのどこからきけばいいのか、わからなくなってしまって。ほんとうにお会いする前は、どうしようかと悩みました」
(※第二回に続く)
「乙女たちの沖縄戦~白梅学徒の記録〜」
【ドラマパート】
監督:松村克弥 脚本:太田隆文
出演:實川結 森田朋依 實川加賀美 永井ゆみ 城之内正明 響一真 加藤亮佑 冴羽一 海老沢貴志 藤 真由美 布施 博
【ドキュメンタリーパート】
構成・監督:太田隆文
証言者:中山きく 武村豊 當山富士子 大宣味ハル子 我喜屋敏子 大城千代子 翁長健治 山内平三郎
聞き手/森田朋依
公式サイト:http://otometachinookinawasen.com
8月2日(火)〜8月7日(日)東京都写真美術館ホールにて公開、以後全国順次公開予定
場面写真およびポスタービジュアルは(C)Kムーブ
<舞台挨拶情報>
東京都写真美術館ホール8月2日(火)15:30〜の回、
出演者と監督による初日舞台挨拶決定!
登壇:森田朋依、永井ゆみ、城之内正明、藤真由美(以上、出演)、
松村克弥(監督)、太田隆文(監督・脚本)