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現在「ドクターX」に出演中の若手注目株。初主演映画では、流浪の名もなき武士に挑む!

水上賢治映画ライター
「CHAIN/チェイン」で主演を務めた上川周作  筆者撮影

 京都芸術大学と映画学科が推進してプロと学生が協働で1本の映画を完成させ、劇場公開を目指すプロジェクト「北白川派」。

 2009年から現在まで、同プロジェクトは8作品を制作・劇場公開している。

 福岡芳穂監督による映画「CHAIN/チェイン」は、同プロジェクトで初となる時代劇。

 従来の幕府を中心とした「保守派」、幕府を倒し新たな政府を作ることを目指す「倒幕派」、天皇を中心とした国を目指す「尊王攘夷派」と3つに勢力が分裂した幕末の京都を舞台に、名もなき武士たちのそれぞれの戦いが描かれる。

 その中で、主演を務めるのは、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)出身の上川周作。

 大学卒業後、本格的に俳優活動をスタートし、映画「止められるか、俺たちを」や大河ドラマ「西郷どん」、連続テレビ小説「まんぷく」などに出演。

 現在高視聴率ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」に出演中でさらに脚光を浴びそうな彼に話を訊く。(全三回)

学生時代、福岡芳穂監督との出会い

 まず前段として、上川は大学時代に、福岡芳穂監督の「正しく生きる」に出演。

 福岡監督は京都芸術大学映画学科の教授でもあった。そのあたりの関連性についてこう明かす。

「実は僕、福岡さんの授業はとっていなかったんです。だから、大学においては直接指導を受けていなくて。

 じゃあ、なんで『正しく生きる』に出演することになったかというと、大学内でオーディションがあったんです。確か大学の2回生のときでした。

 それを受けて、なんとか選ばれて出演することができたんです。

 このオーディションはなかなか印象深かったといいますか。ワークショップやリハーサルを重ねて、撮影に入るギリギリまで誰がどの役をやるのかは伝えられなかった。

 いま振り返ると、早く結果を渡してしまうと、学生たちは『それで終わり』とひとつ安心してしまう。でも、実際は、そこは始まりに過ぎない。そこで終わりではなく、最後まで作品に深く関わっていくことが重要で。最後まで作品のことを考えて、深く関わってはじめて役をまっとうしたことになる。そのことを役者を志す学生たちに教えるために、福岡さんはそうしたのかなと思うんですよね。

 いずれにせよ、この思い出深いオーディションで僕は福岡さんと出会いました」

「CHAIN/チェイン」で主演を務めた上川周作  筆者撮影
「CHAIN/チェイン」で主演を務めた上川周作  筆者撮影

 ただ、授業は受けていなかったが福岡監督とは大学内で顔を合わせていたという。

「福岡さんの第一印象は、『おしゃれな大人の人だな』と。

 で、いい匂いがするんですよ。いつもいい匂いを漂わせている。これ、僕だけじゃなくて、ほとんどの学生が言ってました。『いい匂いがする』って(笑)。

 『正しく生きる』で監督と、俳優であり学生という立場で向き合うことになりましたけど、福岡さんとは、それまではフランクな関係といいますか。

 福岡さんだけでなく、映画学科の教授たちはみなさん気楽に接してくれる方ばかりで、通常イメージする教授と学生の関係とはちょっと違うんですよね。あまり上下関係がないというか。

 なので、大学の校舎の中にハナミズキの木が1本立っていて、そこが喫煙所になっているんですけど、そこにいつも教授の誰かしらがいる。で、授業の合間とかに直接授業を受けていない教授とかともしゃべっていたんですよ(笑)。

 そこで福岡さんとも顔を合わせていた。だから、確認はしていないですけど、たぶん福岡さんも僕の存在は知っていてくれたと思います」

福岡さんの現場で学んだことが確実にいまの僕につながっている

 その中で、「正しく生きる」で実際に映画の現場で福岡監督と初めて向き合ったときの体験をこう明かす。

「まあ、喫煙所では冗談言ったりして、世間話をしていたわけですけど、映画を撮るときは全然違ったといいますか。

 ものすごい緊張感がある現場でした。

 福岡さんの作品に対する本気と真剣さが伝わってくる。だから、こちらもその期待に応えなければという気になってくる。

 また、福岡さんは、ほんとうにリアルな描写や表現になるよう、その領域にもっていくために極限の緊張感を作る。そして、その瞬間を逃さない。

 プロの仕事はすごいと思ったし、作品へ惜しみなく注ぐ情熱と費やすエネルギーに圧倒されました。

 あと、演出も、役者の耳元にいって囁くように言って、相手役には聞かせないんです。

 だから、いざ芝居に入ったら、ガラッと変わったりする。それに対応しなければいけないから、気が抜けない。そういう、役者にとっていい緊張感をもって挑める場を用意してくれる。

 福岡さんに直接言われたわけではないですけど、この経験は、芝居というのは決まったもの、型とかじゃない。常に人の心は動いていて、その時に感じたり、考えたりすることでまったくかわってくるということを教えていただきました。

 なので、当時の僕としては学生映画の映画作りとはまったく違う。これまで経験したことのない現場で。教科書にも載っていない、福岡さん式の映画作りを学ぶことができました。この経験は確実にいまの僕につながっていると思います」

(※第二回に続く)

「CHAIN/チェイン」より
「CHAIN/チェイン」より

「CHAIN/チェイン」

監督:福岡芳穂 

出演:上川周作 塩顕治 池内祥人 村井崇記 佐々木詩音 延岡圭悟 松本薫  和田光沙 辻凪子 土居志央梨 渡辺謙作 鈴木卓爾 高尾悠希 駒野侃

宮本伊織 東山龍平 山本真莉 鈴川法子 水上竜士 福本清三 大西信満

山本浩司 渋川清彦 高岡蒼佑

公式サイト:https://www.chain-movie.com/

場面写真は(C) 北白川派

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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