Yahoo!ニュース

天安門事件を追悼し中国批判の男性が亡命か

宮崎紀秀ジャーナリスト
亡命の希望を訴えた陳思明氏(2023年9月22日投稿X本人のアカウントより)

 中国で天安門事件の追悼を繰り返すなどしていた中国人男性が、22日、台湾の空港で亡命の希望を訴えた。「中国共産党の政治迫害を逃れるために台湾にやって来た」と訴え、今後、アメリカかカナダへの亡命を求めるという。

共産党の政治的迫害を逃れるため

 この男性は中国湖南省に住む陳思明氏(60歳)。陳氏は22日、X(旧ツイッター)への投稿で、台湾の桃園国際空港の乗り継ぎエリアにいると明かした上で、こう訴えた。

「中国共産党の政治的迫害を逃れるために台湾にやって来た。アメリカかカナダの政治的庇護を得られるよう希望している」

 台湾メディアによれば、陳氏は今年7月に中国からラオス、タイに向かった。アメリカへの亡命を求めたが、中国当局によりパスポートを失効させられたため、アメリカのビザを得られず、身の安全を考えタイから台湾にやって来たという。タイから中国へ戻る飛行機の中継地である桃園国際空港で、中国に向かう飛行機には乗らずに留まった。

 陳氏の処遇について、台湾で中国との問題を主管する大陸委員会は「関連機関と対処中」としている。

「歴史を隠蔽」と中国政府を批判

天安門事件を意味する「六四」の文字を掲げる陳氏(2018年6月中国湖南省にて撮影 本人提供)
天安門事件を意味する「六四」の文字を掲げる陳氏(2018年6月中国湖南省にて撮影 本人提供)

 陳氏は、2017年から天安門事件の追悼行事を繰り返し、人権活動などにも参加している。中国では1989年6月4日、民主化を求める学生運動に人民解放軍が介入し多数の死者を出した天安門事件は、すでに解決済みとされ、真相究明や再評価を求める声は封じこまれている。陳氏も追悼活動の度に警察に身柄拘束されるなど圧力を受けて来た。

 筆者が2019年に取材した際に、陳氏は圧力を受けながらも追悼を繰り返す意義をこのように強調した。

「全ての中国人が(天安門事件を)知るべきです。あれだけ多くの人が亡くなったのだから」

 その上で、事件の真相を明かさないばかりか、事件そのものについてタブー視し言論を封じ込めようとする中国政府の態度を痛烈に批判していた。

「天安門事件については話してもいけないし、記念してもいけない。真相を隠している。これこそ歴史の偽造であり隠蔽です」

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

宮崎紀秀の最近の記事