中国軍が台湾にミサイルを撃ち込むビデオ
中国の軍が、台湾本土や周辺海域にミサイルを撃ち込むシミュレーション映像を使用したミュージックビデオを公開した。台湾の統一への強い意志を内外に示す意図があると思われるが、武力行使をちらつかせ戦争を正当化するかのような内容は責任ある大国としての品位を疑わせる。
台湾武力統一の野望?
ビデオを公表したのは台湾への武力行使の際には実動部隊となる中国人民解放軍の東部戦区。建軍記念日の8月1日、中国版SNSウエイシンの公式アカウントで公表した。
ビデオには過去の軍事パレードや、去年8月、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問した際に威嚇のために行った軍事演習とみられる映像が使われ、弾道ミサイルや空母など中国の軍事力を印象付ける内容になっている。
流れる歌の歌詞は、戦争での勝利の決意を示し、兵士や国民を鼓舞するような内容。「敵を殺す能力をひたすら鍛える」などという物騒なものも含まれる。
中でも目を疑うのは、2分半余りのビデオの中で、台湾本土やその周辺海峡にミサイルを撃ち込むシミュレーションのグラフィック映像が2回に亘って使われている点だ。中国は台湾の武力統一という選択肢を放棄していないと公言しているが、武力侵攻の野望を自慢気に誇示するのは国際社会の一員としてあまりに非常識だし、その感覚は著しく危険だ。
中国はなぜ好戦的?
ビデオには、朝鮮戦争で中国が北朝鮮に送った義勇軍や板門店での休戦協定といった過去の映像も使われており、中国がアメリカ軍を中心とする国連軍を押し返した歴史を思い出させる意図があると見られる。
ビデオは総じて好戦的で、中国共産党や軍の関わった武力行使を肯定しており、最後は明らかに台湾を念頭においた「国家主権を守るために銃で敵を防ぐ」「祖国統一は確固として揺るがない」という歌詞で締めくくられる。
愛国主義的な論調の中国紙「環球時報」は、このビデオが発するメッセージとは、中国の全軍が常に臨戦態勢で、いかなる方法で外国勢力が台湾独立の国家分裂を目論もうともその企てを挫く十分な能力があること、などと分析している。
8月1日は1927年の中国共産党による江西省南昌での武装蜂起を記念している。中国を建国した毛沢東は「権力は銃口から生まれる」との考えを持っていたが、中国共産党の指導者の発想は今も基本的には変わっていないとみるべきだ。