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中国の凄惨ないじめ。鼻血を流す14歳少年を押さえつけ飛び蹴りも

宮崎紀秀ジャーナリスト
しゃがんだ少年の背中に一人の少年が飛び蹴りをした(中国のSNSより)

 未成年のいじめが深刻さを増す中国で、また少年が少年に対して容赦のない暴力を振るういじめの実態が映像で明らかになった。二人の少年が一人の少年に対し交互に暴行を加え、鼻から出血し続けている被害者に対し飛び蹴りを食らわせる様子も映っている。

 映像には、竹林に沿った人気のない道路で、黒いTシャツを着た少年二人が白いTシャツの少年を囲んで暴行を加える様子が映っている。黒シャツの二人が、一方的に白シャツの少年の顔を殴ったり、胸に蹴りを入れたりなど暴行を続け、白シャツの少年は鼻から出血、しきりに手で拭い、シャツは血だらけになっていた。黒シャツの一人は、細い棒を使って少年を叩いてもいた。

 黒シャツの少年は、被害少年を跪かせた上に、びんたを続けるなど暴行を止めない。さらに一人がしゃがんだ少年の頭を持ち上げるように押さえ、もう一人の少年が背後から助走をつけて背中に飛び蹴りを入れる場面もあった。

 中国メディアによれば、映像は5月7日に四川省宜賓市の住民のグループチャットの中で共有されたものという。

 暴行を受けた少年の家族によれば、事件が起きたのはゴールデンウイークの休暇で帰宅していた学生らが学校の寮に戻った5月3日。その週末の6日、帰宅した少年はぼんやりしていて特に眠たがったが、いじめについては家族に何も言わなかった。その晩、家族が映像を見て事が明らかになったという。少年はその日、さらに林の中に連れ込まれ殴られた後、洋服を着替えさえられ口止めされていたという。

 地元の警察によれば、被害少年は14歳で、加害少年は12歳と14歳。被害少年にネット上で悪口を言われたことに腹を立てた12歳の少年が、もう一人と共に暴行を加えたという。警察はさらに調べを進めるとしている。

 地元の教育当局者によれば、被害少年は地元の生徒だが、加害側は地元の学校の生徒ではないという。この当局者は「このような事件が起きたことに憤っている」とした上、「今後、学生に対するいじめ防止教育を強化し、いじめに対し『ノー』と言えるようにしていく」と話したという。だが、残念ながら即効性のあるいじめ防止策とは言えないだろう。

 中国で明らかになるいじめの実態を見て思うのは(もちろん中国に限ったことではないが)、少年少女たちの容赦のない残酷さだ。特に複数がかかわる場合は、気分が高揚してくるのか、暴力はエスカレートの一方通行のようだ。

 今もひっそり行われているかもしれないいじめが、このような凄惨さを帯びている可能性があること、そして暴力は受けた側のみならず加えた側も深く傷つくというシンプルなことを、今一度多くの人に思い出して欲しい。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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