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新たな死者も。コロナを抑え込んだはずの中国で再流行の兆し?

宮崎紀秀ジャーナリスト
都市封鎖中の河北省石家荘。臨時の隔離施設が建設されている(2021年1月13日)(写真:ロイター/アフロ)

 中国で再び、新型コロナウイルスによる死者が出た。1日の新たな感染者が100人を超える事態となり、じわじわと感染が広がりつつある。抑え込んだはずのコロナの再流行の兆しに、中国当局も警戒感を強め、防疫対策を強化している。

再び増え始めた国内感染者

 中国の国家衛生健康委員会によれば、13日、新型コロナにより新たに1人の死者が出た。中国メディアは本土で死者が出たのは8か月ぶりと報じた。

 13日の0時から24時までに、中国全土で新たに138人の感染が確認された。うち海外から流入した感染者は14人で、残りの124人は国内で感染した患者である。国内感染者は北部の河北省と東北部の黒竜江省で増えている。124人の新規国内感染者のうち81人が河北省、43 人が黒竜江省である。

すでに2000万人以上が封鎖下に

 河北省では同日24時の時点で、海外から流入した2人を含め465人が感染している。同省では、早々に、省都・石家荘市に加え、邢台市、廊坊市が都市封鎖(ロックダウン)されている。同省が12日の記者会見で明らかにした。人口規模は順に1000万、800万、490万である。即ち2000万人以上が、すでに都市封鎖下に置かれている。

 石家荘では、全住民に対しPCR検査を行うなどの対策が採られた。その徹底ぶりは、居留守を使ってPCR検査を逃れようとした男が、約50人から1300万元(約2億円)余りを騙し取り、6年間逃亡していた詐欺犯だと判明した、などという妙な成果が上がってしまうほどだ。

感染者の多くが宴会に参加

 コロナを抑え込んだとしていた中国でも、感染拡大の危険性は、人が集まる場所でのクラスターの発生に潜んでいるようだ。石家荘で13日に確認された新たな感染者75人のうち、7人が結婚式の宴会に参加しており、同じ施設を訪れていた。この施設の職員1人も75人の感染者に含まれている。それ以前に確認された感染者を含めると、少なくとも23人がこの施設への訪問歴があったという。同施設は現在、営業停止となっている。

今年の春節は人を移動させない?

 中国では、来月2月12日に旧暦の正月、春節を迎える。本来ならば里帰りなどで人の移動が盛んになる時期だが、今年は様子が違いそうだ。鉄道チケットが購入できるようになる春節1か月前を迎え、中国メディアは、各都市が訪問者に対しどのような義務を課しているかを報じた。

 例えば北京なら、感染の中、高リスク地域から来た人には、14日の集中隔離とPCR検査を義務付ける。低リスク地域から来た人の場合は、専用のアプリに個人情報を登録し、訪問先の会社や「社区」と呼ばれる住民管理組織に事前に連絡する、などである。こうした措置に加え、各地の政府などは、不要不急の移動を避け、現居住地で新年を迎えるよう呼びかけている。

 去年の春節は1月25日。武漢はその2日前に都市封鎖した。だが、それで感染拡大を防いだわけではなく、同市の市長が「封鎖以前にすでに500万人が武漢を離れていた」という事実を明らかにし、世界の顰蹙を買った。感染再流行の兆しの中で、さすがの中国も同じ過ちを繰り返す気はないようだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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