精神障害者の28歳女性が男4人に転売され2度妊娠。中国人身売買の現実

解消されない社会矛盾が悲惨な事件の温床になっている(写真:アフロ)

 精神障害を持つ28歳の女性が、結婚相手として次々と男たちに転売された。犯人の51歳の女は、この女性を1年半の間に4人の男に斡旋し、日本円で120万〜200万円の高額な“紹介料”を得ていた。嫁として売られた女性は、この間2回妊娠した。

 中国メディアの報じた内容を整理すると、事件の全貌はこうなる。

精神障害の女性を紹介されたのは43歳の男性

 中国東南部、浙江省の江山市に住む43歳の男性には、なかなか嫁が見つからなかった。そこで、去年2018年、結婚仲介を生業とする陳という51歳の女を通じ、若く美しい女性を紹介された。1500キロは離れている広西チワン族自治区出身の26歳(当時)。男性は、陳から「義理の娘」と紹介された。

 男性は、謝礼として13万元(約202万円)を支払い、女性を連れて帰り結婚の手続きも済ませた。しかし、後日、女性が、断続的な精神障害の発作を患っていることや、過去に子供を産んでいた事実が分かった。男性は、返金を求めたが、陳はこれに応じず、女性を連れて姿をくらましてしまった。

 男性は次第に腹が立ってきて、今年5月、この件を警察に通報するに至った。

51歳の主犯を拘束。妊娠女性を保護

 この通報が、陳の犯罪を暴くきっかけとなった。

 通報を受けた江山市の警察では、これ以外にも「新婦の逃亡」事件が相次いでいることを把握していた。それらには、いずれも陳がかかわっていた。警察は、専門チームを作って捜査をすすめ、今年7月、広西チワン族自治区の南寧市にある賃貸住宅の一室で、陳を拘束すると共に、精神障害のある女性を保護した。

 この時、女性は子供を身ごもっていた。

人身売買の構図が明らかに

 調べを進めると、これらは単なる結婚関係上のトラブルではなく、陳による結婚詐欺と人身売買の犯罪実態が明らかになった。

 嫁として売られていた女性は、広西チワン族自治区の山村出身。両親が出稼ぎに行って家にいない環境で育ち、成人してから断続的に精神疾患を発症するようになった。正常な時は、健常者と変わらないが、誰にも管理されていないため、最後は、ホームレスのような生活をしていたという。

 その女性が、この悲惨な事件に巻き込まれたのは、一昨年2017年6月。

美しい容姿があだに?

 陳の手下が、南寧市内で彼女を見つけた。髪は乱れ顔は何日も洗っていないような様だったが、その容姿が整っているのに目をつけた。

 陳は、「義理の娘」としてこの女性と生活を共にし、その十数日後、20歳の男性に彼女を結婚相手として紹介した。謝礼は8万元(約124万円)である。女性の精神疾患が明らかになり、1か月後、返金を求められるが、陳はこれを拒絶。女性を連れ去った。

生まれた赤ちゃんは売り飛ばし

 続いて同年10月、30歳の別の男性にその女性を紹介し、謝礼8万元(約124万円)を受け取った。やはり後日、彼女の精神障害を理由に30歳の男性からも返金を求められる。だが、女性はすでに妊娠していた。

 陳は、「返金を求めるなら、子供の養育費を払ってもらう」などと男性を脅した。

 陳は、妊娠中の女性を連れ去った。女性は、陳の元で、翌年2018年7月に男の子を出産する。陳は、生まれて4日後に、8万元(約124万円)でこの男の子を売ってしまった。

 出産の翌月、陳は、さらに彼女を43の男性と結婚させる。冒頭に記した通報した男性である。

主犯の女は「良いことをした」

 陳は、この男性の元から彼女を連れ帰った後、その2か月後の12月には、更に別の男性の元に嫁がせた。この男性は、陳の要求する13万元(約202万円)の謝礼を支払えなかったため、陳は再び女性を連れ去った。女性が保護された時に身ごもっていたのは、この男性との間の子どもとみられる。

 警察は、今月26日に捜査の結果を明らかにした。陳を主犯とする結婚詐欺グループが、各地で精神障害の女性を物色して結婚紹介し、高額の紹介料を得ていたとしている。同グループが、8件の結婚詐欺、3件の児童誘拐売り飛ばしにかかわり、取引金額は70万元(約1092万円)余りに達したとして、7人を逮捕した。

 陳は、調べに対し「妻のいない人に妻を紹介し、子供のいない家庭に子供を探してあげた。良いことをしたのだ」と話しているという。

 農村における深刻な嫁不足、親が出稼ぎでいない留守児童、横行する婦女子の売買など中国がなかなか解消できない社会の歪みが、如実に現れた事件である。