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テキサスで特訓中のルイス・ネリ。トレーナーに聞いた井上尚弥を攻略するポイントとは

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
ネリvs.アラメダ(写真:Amanda Westcott/SHOWTIME)

4年ぶりのコンビ復活

 1990年のマイク・タイソンvs.バスター・ダグラスのヘビー級タイトルマッチ以来34年ぶりに東京ドームで開催されるボクシング・イベント。スーパーバンタム級4団体統一王者井上尚弥(大橋)vs.挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)まで約1ヵ月半となった。5月6日の決戦に向けてネリは米国テキサス州エルパソを拠点にトレーニングを敢行している。3月6日、東京ドーム・ホテルで行われた発表記者会見で井上とネリは初めてフェイスオフした。日本へネリに帯同し、今回チーフトレーナーを務めるメキシコ人、サミール・ロサノ氏にキャンプの状況を聞いてみた(取材日は3月19日)。

――まずネリとの関係ですが、どんないきさつでトレーナーを引き受けたのですか?

ロサノ氏「彼から直々、頼まれたのです。4年前、ネリがアーロン・アラメダ(メキシコ)と対戦した時、彼を担当しました(試合はWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦。ネリの3-0判定勝ち)。今回、イノウエとの試合が決まり、2度目の仕事になります」

――その時ネリはサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ=スーパーミドル級4冠統一王者)のトレーナー、エディ・レイノソ氏に弟子入りしていましたね。

ロサノ氏「そうです。私はエディといっしょに選手を指導しました。カネロのほか、ライアン・ガルシア(米=スーパーライト級。インスタグラムのフォロワーが1000万人を超える人気選手)、アンディ・ルイス(米/メキシコ=元世界ヘビー級3団体統一王者)、オスカル・バルデス(メキシコ=元世界フェザー級&スーパーフェザー級王者)、フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ=WBC世界フライ級王者)らも担当しました」

カネロ・アルバレス(左)をサポートしたロサノ氏(写真:El Universal)
カネロ・アルバレス(左)をサポートしたロサノ氏(写真:El Universal)

今週から本格的にスパーリング開始

――ジムの名前とロケーションを教えてください。

ロサノ氏「ジムは『ダイナミス・フィットネス』といいます。エルパソのダウンタウンから車で15分から20分ぐらいの距離にあります」

――以前ネリは同じエルパソで別のトレーナーに師事していたという記事を見ましたが。

ロサノ氏「それはイスマエル・マジェロという人でしょう。彼もいっしょにネリを指導していますよ」

――ネリの1日のスケジュールを教えてください。

ロサノ氏「朝5時に起きて、あるいは4時の日もあってフィジカルトレーニング。ロードワークです。主に山地を走る。それから午後1時から4時、または4時半までジムワーク。日によっては夕方、同じジムでウエートトレーニングを行う。器具が備えてあるので別のジムへ移動する必要はありません」

――スパーリングは?

ロサノ氏「始めています。今週からラスベガスの経験豊富な強豪を呼んで本格的に行う予定。名前? それはちょっと……」

――ではラテン系ですか黒人ですか?

ロサノ氏「ラティーノだと思います」

――これだけのビッグマッチですからコーチ役の責任も大きいですね。

ロサノ氏「その通り。ネリにはとりわけディシプリン(規律)を要求している。いっしょに仕事を始めて彼はここまで私の要求に適ったトレーニングを実行していると思います」

イノウエはパンチをもらい過ぎる

 元プロボクサーのロサノ氏はエルパソと国境をはさんだメキシコのシウダーフアレスが地元。記録サイト「ボックスレク」によると2012年10月から17年4月までリングに上がり、7勝1KO2敗のレコードを残した。階級はスーパーライト級。上述のように著名トレーナー兼マネジャー、エディ・レイノソ氏のアシスタント的な存在だった。ネリはこれまでアラメダ戦以外、地元メキシコ・ティファナのイスマエル・ラミレス・トレーナーの下でキャリアを進めてきたが、ロサノ氏はネリとラミレス氏とは“切れた”という。

――さて、ネリが井上に勝つキーポイントは何になるでしょう?

ロサノ氏「たくさんのファクターがある。イノウエはパーフェクトな選手です。だから一筋縄では行かない。Aがダメなら、B、Cとプランを変更して臨機応変に対処しなければならない。イノウエのスタイルを分析し尽くして作戦を講じなければならない。リングに立てば、その作戦が役立たないこともあり得る。ただ一貫して言えるのは圧力をかけ続けることだね」

――分析中に井上の欠点は見えてきますか?

ロサノ氏「あれほどの選手なのに、不必要にパンチをもらうシーンがあることかな……」

井上vs.ネリの発表会見。右端がロサノ氏(写真:井上尚弥オフィシャルWEBサイトより)
井上vs.ネリの発表会見。右端がロサノ氏(写真:井上尚弥オフィシャルWEBサイトより)

ネリにディシプリンを求める

――ネリにディシプリンを強く要求していますか?

ロサノ氏「日本での最後の試合(山中慎介との第2戦)でネリはディシプリンに問題があったと思う。でももうそんなことは許されない。予備計量など、すべてに対して真摯に従ってベストなコンディションに仕上げてリングに上げたい」

――これまでの井上のベストファイトは?

ロサノ氏「ノニト・ドネアとの第2戦でしょう。スティーブン・フルトン戦もそれに値するかもしれないけど、フルトンが優勢だったのは1つのラウンドしかなかった。だから対ドネア再戦を挙げます」

――日本へはエルパソから直接出発?

ロサノ氏「そう。エルパソからロサンゼルス経由で日本へ行きます。到着は試合15日前ぐらいの予定。今回の会見では空港に迎えの車が待機していたのでとてもうれしかった」

――近々、ネリにインタビューしたいのですが……。

ロサノ氏「わかりました。彼に頼んでみます。アスタ・ルエゴ(ではまた、さようなら)」

 ネリは会見で「メキシコの試合では家族や友人、支援者たちが観ているので、ナーバスになる」と語っている。裏返して言えば地元ティファナでは周囲の“誘惑”が多く、調整に支障をきたすということだろう。ネリが故郷から遠く離れたエルパソを拠点にしている理由がそこにある。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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