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ネリがテキサスでキャンプを開始。井上尚弥そっくりの相手?とスパーリング三昧

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
WBC挑戦者決定戦を勝ち抜いたネリ(写真:Cris Esqueda / GBP)

1月から始動していた?

 5月、東京ドームでスーパーバンタム級4団体統一チャンピオン井上尚弥(大橋)に挑戦が濃厚なWBC同級1位ルイス・ネリ(メキシコ)が米国テキサス州エルパソでトレーニングキャンプをスタートさせた。先月、ネリのイスマエル・ラミレス・トレーナーとのインタビュー記事でネリのキャンプは「2月1日から」と記したが、別情報ではすでに1月中にエルパソへ移って始動していたもようだ。

 今回、ラミレス・トレーナーは同行しておらず、現地で指示を与えるのはルウ・アネジョ・トレーナー。同トレーナー配下のスーパーバンタム級アリエル“アパチェ”モレノ(メキシコ)が3月に試合を控えているため、そのスパーリングパートナーとしてネリは招へいされたとも言われる。

 フルネーム、ヘスス・アリエル・モレノ・アリアス(25歳)は二世ボクサーで、同じく“アパチェ”(アパッチ族の意味)のニックネームを持つ父サントス・モレノは1970年代半ばから90年3月までメキシコ、米国両国でリングに上がり、元WBCフェザー級王者マルコス・ビジャサナ(メキシコ)や2階級制覇王者ロジャー・メイウェザー(米)と対戦した。また母のイメルダ・アリアスも両国でファイトし23戦のキャリアを持つ著名な女子ボクサーだった。

スパーリング相手はサウスポー

 良血に恵まれたモレノは記録サイト「ボックスレク」によると6勝5KO1敗。軽量級複数制覇王者ホルヘ・アルセの甥でプロスペクトの一人だったカリム・アルセ(メキシコ)には7回TKO勝ちを収めているが、昨年10月の最新試合では無名のジョセフ・モラレス・ビジャール(メキシコ)という選手に6回TKO負けを喫している。一方で地元のボクシング・サイト「ボックス・アルディア・ドットコム」は8勝7KO1敗と伝える。どちらが本当なのか。

 また同サイトによるとモレノはサウスポーだとある。ユーチューブでアルセ戦をチェックしてみると確かに左構えで戦っている。オーソドックスの井上と対戦するにあたり、ネリはサウスポーとスパーリングを行う必要があるのだろうか。謎は深まるばかりだが、モレノのボクシングスタイルは井上と瓜二つだとボックス・アルディア・ドットコムは記す。

米テキサス州エルパソでキャンプインしたネリ(写真:X@luisnerynpより)
米テキサス州エルパソでキャンプインしたネリ(写真:X@luisnerynpより)

 その真偽は追って解明するとして、ネリとモレノが練習するジムでは元WBC・S・フェザー級王者三浦隆司と対戦した古豪ミゲル“ミッキー”ローマン(メキシコ)や無敗のスーパーライト級ブライアン・フローレス(メキシコ=25勝14KO1分無敗。27歳)が汗を流している。スタイルが井上に似ているのは“エル・ニーニョ・マラビーリャ”(ザ・マーベラス・ボーイ)のニックネームで呼ばれるフローレスではないかと思われるが、ウエート差があり過ぎて対象外になってしまう。

井上はサウスポーが苦手?

 ネリはいまのところ「雇われた」存在なのだろうか。それとも何かしらの効果を求めてサウスポーと手合わせしているのだろうか。

 一方でネリのメキシコのプロモーター「サンフェル・ボクシング」のトップ、フェルナンド・ベルトラン氏は「こちらは契約書にサインを終えている。あとは日本のコミッションの決断次第だ」と語っている。これはメキシコで一般紙も含めて最大の発行部数を誇るスポーツ紙「エスト」の取材に答えて明かしたもので「私はネリに絶対の信頼を置いている。試合は強者の激突になる。イノウエはサウスポーを苦手にしていると思う。そしてこのサウスポーはパンチがある」とバックアップ。「ネリはこれまで2度、タイトルマッチを戦い、日本のファンに名前が浸透している。(最終)調整や食事にも不慣れではない。しっかりと規律を順守するようになり、今キャリアの絶頂期に近づいている」と時は熟したと言いたげだ。

 ネリがエルパソでいつまで調整を続けるかわからない。おそらく井上挑戦が正式発表されれば、ジムワークのペースを上げるだろう。地元メキシコ・ティファナに戻り再始動するのか、それとも同地に留まり特訓を続けるのか。とにかく山中慎介との2試合以上に気合いが入っているのは確か。悪役は悪役で終わるのか、それとも覚醒するのか。予想される決戦まで3ヵ月弱。ネリの動向から目が離せない。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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