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村田諒太の3度目の復活はあるのか? 本場で観たいネクスト・ゴロフキンとの対決

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
ゴロフキンvs村田(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

西岡vsドネアを思い出した

 日本発の「ビッグドラマ・ショー」、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)vs村田諒太(帝拳)の世界ミドル級統一戦は海外でも大きな反響を呼んだ。米国ではゴロフキンが9月、宿敵スーパーミドル級4団体統一王者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)との第3戦、挑戦を決定づけた――という報道がテーマとなるが、試合内容の評価も高い。スポーツ専門メディアのESPNドットコムは「今年最初のファイト・オブ・ジ・イヤー(年間最高試合)候補だ」と記し、老舗ボクシング専門誌ザ・リングのホームページでは「(試合が決した)9ラウンドはラウンド・オブ・ジ・イヤー(年間最高ラウンド)に相当する」と称賛を惜しまない。

 決着のついた9回は、個人的に元WBC世界スーパーバンタム級王者西岡利晃が2012年10月、米カリフォルニア州カーソンで当時の同級WBO王者ノニト・ドネア(フィリピン)と対戦した一戦を思い出した。試合は同じ9回、ドネアに2度目のダウンを奪われた西岡にコーナーがタオルをリクエストして幕が降りた。西岡氏(現在は西岡利晃GYM会長)も帝拳ジム所属。ドネア戦を最後にグローブを吊るした。

 日本からの情報では村田はゴロフキン戦を花道に現役引退を発表する可能性が高いという。「やはりそうなのか…」と思う半面、あのゴロフキン相手にあれだけやれたのだから、「もっと魅せてもらいたい」という感情も湧いてくる。日本でも「次のスーパーファイトが楽しみだ」と期待するファン、メディア関係者がいる。私もその一人だ。

熱視線を送るデラホーヤ氏

 そして贅沢を言えば、もう一度、本場リングで彼の勇姿を観たい。再起まで時間がかかってもいい。ゴロフキン戦の大奮闘で村田を受け入れる米国の対応は好意的に変化すると推測される。ゴロフキン戦の前に掲載した記事で予想を聞いた元6階級制覇王者オスカー・デラホーヤ氏(ゴールデンボーイ・プロモーションズ会長兼CEO)は「ムラタはいい選手、好きなボクサー」と語り、条件が許せば自身でプロモートしたいような印象を感じさせた。ただ、米国側の共同プロモーターはライバルのトップランク社だから同氏の構想は簡単には実現しない。それでも村田に熱視線を向けていることは間違いない。

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 デラホーヤ氏の持ち駒はWBCとWBOでミドル級1位を占めるハイメ・ムンギア(メキシコ=25歳)だ。カネロの後を追う強打者ムンギアはこれまで39勝30KO無敗。元WBO世界スーパーウェルター級王者のムンギアは王座返上後ミドル級に転向し5勝4KO勝ちと好調。昨年あたり、村田に挑戦する話も持ち上がったという。

 ミドル級の勢力図は村田に勝ったゴロフキンがIBF&WBAスーパー王者に君臨。WBC王者はジャモール・チャーロ(米)、WBO王者がデメトゥリアス・アンドラーデ(米)という陣容。この3人は全階級を通じても屈指の実力者揃い。現在、最強ボクサーと畏怖されるカネロに挑めば好ファイトが約束される。同時にいずれもファン垂涎カードになる。

 ちなみにムンギアはチャーロ(32勝22KO無敗)に6月18日挑戦する交渉が締結寸前まで進んでいた。しかし中継するテレビの違い(チャーロはショータイム、ムンギアはストリーミング配信DAZN)により最後は破談してしまった。またデラホーヤ氏によるとムンギアにはゴロフキンやカネロと接戦を演じた元世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブス(米)と対戦するオプションがあったが、これも物別れに終わった。ジェイコブスがスーパーミドル級に進出したためだろう。

2つの暫定王座決定戦が意味するもの

 スーパーミドル級と言えば、WBO王者アンドラーデも進出を決意。ミドル級王座を保持したまま、5月21日、英国でザック・パーカー(英)とのWBOスーパーミドル級暫定王座決定戦に臨む。勝者が正規王者カネロの指名挑戦者に名乗りを上げる設定。よってカネロ戦を熱望するアンドラーデは勝てばミドル級王座を返上してスーパーミドル級一本に絞る公算が強い。

 興味深いのは、パーカー戦で有利の予想が立つアンドラーデの後釜を決めるWBOミドル級暫定王座決定戦も同じ5月21日に内定していることだ。カードは2位ジャニベク・アリムカヌウェ(カザフスタン)vs5位ダニー・ディグナム(英)。ラスベガスでトップランク社のプロモートで予定される。

 WBO1位はムンギアなのになぜ?と思う方もいるだろう。WBOは事前にムンギアvsアリムカヌウェの入札を通達したが、ゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)はスルー。興行の権利はカザフスタン人を擁するトップランク社が獲得した。これは米国を拠点にするものの、まだ名前が浸透していないアリムカヌウェの背景を考慮したと同時にGBPが彼の実力を警戒したためだと受け取れる。何しろアリムカヌウェ(11勝7KO無敗=28歳)は「カザフの新しい星」、「ネクスト・ゴロフキン」と呼ばれる逸材。ディグナム(14勝8KO1分無敗=30歳)を相手に有利の予想が立つ。

ブラントとエンダムに圧勝

 アマチュアで300勝8敗。リオデジャネイロ五輪代表のサウスポー、アリムカヌウェは昨年6月、村田と1勝1敗の元WBAミドル級王者ロブ・ブラント(米)とワシル・ロマチェンコvs中谷正義のセミファイナルで対戦。村田との第2戦から復帰2戦目のブラントに8回終了TKO勝ちを収めた。ジャブの突き合いで有利に進めるアリムカヌウェは6回に左ストレートでダウンを奪い、その後も優勢をキープしてブラントを棄権に追い込んだ。

 そして11月、同じくラスベガスで元WBAミドル級王者アッサン・エンダム(フランス)とグローブを交えたアリムカヌウェは3回に左アッパーで利かせて倒しリード。ここからエンダムが頑張り、ラウンドを重ねる。しかし顔面が腫れ上がり、ダメージを被るエンダムは8回、集中打を浴びてストップされた。この試合でアンドラーデの指名挑戦者に就いたアリムカヌウェだったが、王者は応じることなく、スーパーミドル級進出を決断。理由はムンギアのケースと同様だった。

 村田ゆかりの2人に圧勝したアリムカヌウェはアンドラーデvsパーカーの結果次第で正規王者昇格が有力となる。彼は偉大な先達ゴロフキンの軌跡を追いかけることができるか。そこに村田が立ちはだかるストーリーがあるとすれば、必見だろう。村田の進退が注目される中、このカードはドリームマッチの領域に属する。だが、トップランク社との関係を維持する村田だけに、今後の状況次第で現実味を帯びる見通しも出てくる。

 このまま身を引くことは日本人の琴線に触れ、喝さいが送られるかもしれない。だが、「感動をもう一度」という願いがあるのも事実。不退転の決意を持つ村田の3度目の復活を期待したい。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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