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えっ、ホント?メイウェザーvsパッキアオ2 年内開催の信ぴょう性

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
一気に締結しそうな超大物同士のリマッチ(写真:badlefthook.com)

期日は12月上旬

 ボクシング界をリードした2巨頭、フロイド・メイウェザー(米)とマニー・パッキャオ(フィリピン)の再戦が一躍、現実味を帯びてきた。メイウェザーが東京で記者会見を行った翌日17日(日本時間18日)米国有力メディアのバッド・レフトフック・ドットコムやESPNドットコムは「向こう1週間以内に試合が締結するだろう」と発信。期日も12月1日あるいは同8日、場所はラスベガスと具体的に伝えている。

 東京での会見でメイウェザーはパッキャオとのリマッチの可能性を匂わせたが、リング復帰は来年2019年だと明言した。詳細はわからないが、パッキャオ戦に関してはあまり信ぴょう性があるとは思えなかった。ところが米国、フィリピンでは交渉が急展開している様子。12月初旬といえば、もう2ヵ月半しかない。いったい何が彼ら、両陣営をせき立てているのか。

初戦もスピード締結

 そうは言っても第1戦が締結したタイミングも同じような時期だった。2月のプレゼンから5月2日(2015年)の対決まで一気に時間が過ぎ去った印象がした。今回も同じ流れを汲むのか。結実まで年月を要した超ビッグネーム対決は最後、堰を切ったように実現へ驀進した。

 それは一も二もなく、膨大なマネーを生み出す条件が整ったからに他ならない。メイウェザーの報酬は小国の国内総生産(GDP)を上回るといわれた。パッキアオもメイウェザーに次ぎ同年度のアスリート&芸能人長者番付2位を占めた。ペイパービュー(PPV)売り上げ、ゲート収入とも歴代ダントツトップの記録を樹立。ボクシングはもちろんスポーツ全般を彩る歴史的ファイトとなった。

 ただしウェルター級タイトル統一戦として行われた一戦は中身が伴わなかった。予想できたこととはいえ、パッキアオがメイウェザーのスキルとアウトボクシングに屈した試合は凡戦に終わった。恩恵に浴し笑ったのは戦った2人とプロモーター、取り巻きをはじめとする両陣営のみ。期待を裏切られたファンは不満を露わにした。

千両役者同士の大団円

 そんな背景からリマッチが組まれても果たして初戦のような空前の人気を呼ぶのかという疑問が頭に浮かぶ。それでも「今度はそうは行かない」と断言できないところが2人が紛れもない千両役者であるゆえんである。初戦はつまらなかったから今度は白熱するのではと期待するメディアもある。今回もパッキアオが善玉でメイウェザーがヒールという設定は変わりないだろう。もっともメイウェザーが負けるシーンを見たいというのが多くのファンの観戦意欲を刺激し、PPV購買数を飛躍的に伸ばす最大の理由となる。

 メイウェザー41歳、パッキアオも12月に40歳を迎える。前者はこれまで50勝27KO無敗。念願のプロデビュー以来50連勝を達成しただけに記録的なモチベーションはそれほど高くないはず。だが金銭面の貪欲さは以前と変わりない。今年初め総合格闘技UFC(ウルティメイト・ファイティング・チャンピオンズ)に参戦するポーズを取ったのは気まぐれな行動だった。やはり“本業”に戻らないと稼げないと認識した様子だ。

 そしてガッポリ稼げるダンスパートナーはフィリピンの上院議員しか存在しない。第1戦から3年半近くが経過してもウェルター級、いやボクシング全体の知名度でも2人に勝る選手を列挙するのは難しい。ウェルター級ではエロール・スペンス(米=IBF王者)という実力的にメイウェザーに比類し継承するチャンピオンが誕生している。しかしスーパースターに上り詰めるには時間と経験そしてカリスマ性が必要。だからこそメイウェザーvsスペンスが観たいと念ずるのだが、メイウェザーが磁石のごとくパッキアオに引きつけられてしまうのがリングのビジネス法則なのだろう。一つツッコめばeasy money(楽にもうける金)に走る傾向にはどうしても同調しかねる。

マクレガー戦と同じ設定

 昨年メイウェザーがUFCのチャンピオン、コナー・マクレガー(アイルランド)と対戦する前、本当にこの異色対決が実現すると信じていたファンはほとんどいなかった。なのにあっという間のスピード締結で開始ゴングが打ち鳴らされた。終わってみればパッキアオ戦に迫る常軌を逸する利益をメイウェザーとマクレガーは享受した。メイウェザーはこの1試合で約320億円稼ぎ、前記の長者番付で3年ぶりに1位に復帰。マグレガーも約109億円ゲットし12位に顔を出した。

 それでもまだ両雄が再びグローブを交えるとは想像できないのだが、以前知り合った米国在住のフィリピン人男性で、個人的にパッキアオと非常に親しいといわれる人物にコンタクトしてみた。すると「マニーはとても乗り気で、もうすぐにでも正式アナウンスされる見込み」との返事。これは冒頭の2メディアの記事に呼応する。記事はまだ“could be”(たぶん、そうかも)と記述されているが、マクレガー戦のケースから私はシリアスに受け止め出している。そして日本から伝えられたように「日本開催」の線もあるのか?最後にパッキアオ(60勝39KO7敗2分)の最新のコメントを記す。

 「メイウェザーあるいは相手が誰になろうと来週までに場所、期日などスケジュールが発表されるだろう」(ESPNドットコム)

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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