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元竜王・佐藤康光九段(54)竜王戦1組決勝&本戦進出決定! 前期挑戦者・伊藤匠七段(21)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月10日。東京・将棋会館において第37期竜王戦1組ランキング戦準決勝▲佐藤康光九段(54歳)-△伊藤匠七段(21歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は21時45分に終局。結果は115手で佐藤九段の勝ちとなりました。佐藤九段はこれで1組決勝に進出。2位以内が確定して、本戦(決勝トーナメント進出)を決めました。

 敗れた伊藤七段は出場者決定戦(3位決定戦)に回ります。

元竜王 VS. 前期竜王挑戦者

 佐藤現九段は、竜王戦は第1期から参加。1989年(第2期)には5組で優勝し、初めて本戦進出。1993年には初挑戦で七番勝負を制し、竜王位に就いています。

 前期は2組で2位で本戦に進出。今期は定位置ともいえる1組に戻ってきました。

 今期の時点で、竜王位1期を含め、1組以上は通算29期。これは羽生善治九段の34期に次ぐ記録です。

 伊藤匠七段は昨年2023年、5組で優勝し本戦に進出。史上初めて5組から挑戦権を獲得しました。

 伊藤七段は七番勝負では、残念ながら藤井聡太竜王に4連敗で敗退しました。しかし藤井竜王のライバル候補として、その名を広く世間に知らしめたのではないでしょうか。

 伊藤七段は今期、5組からジャンプアップして、1組の所属です。

 今期1組では、佐藤九段は永瀬拓矢九段、広瀬章人九段を連破。伊藤七段は菅井竜也八段、木村一基九段に勝ってベスト4に進んでいます。

佐藤九段、押しきって快勝

 本局は振り駒の結果、佐藤九段先手に。矢倉模様の立ち上がりで、伊藤七段が現代調の速い動きを匂わせるのに対して、佐藤九段はクラシカルな金矢倉に組みました。

 現在は自由闊達な序盤戦術で知られる佐藤九段。しかし1993年、94年、95年、羽生現九段と竜王戦七番勝負で3期連続で戦った頃は、伝統的な相矢倉で、当時最先端の定跡を切り開いた一人でもありました。

 歩がぶつかって戦いが始まったあと、佐藤九段は銀を前線に進めて攻勢を取ります。対して伊藤七段はカウンターで桂を跳ね、盤上全体で火の手が上がりました。

 中盤のねじり合いの中、少しずつリードを稼いでいったのは、佐藤九段でした。相手の手に乗りながら、左側の守りの桂を中段に跳ね出し、うまく攻めに使います。そのあと、83手目、自陣右側に打ちつけた桂も好手。伊藤七段が敷いた防衛ラインをうまい手順で突破していきました。

 105手目、佐藤九段は伊藤陣中央に左側の桂を成り込みます。理想的な桂の三段活用が決まった形で、佐藤九段が勝勢を確かなものとしました。

 受けなしとなった伊藤七段。最後は佐藤玉に迫りますが、わずかに駒が足りず詰みません。馬の王手に対して115手目、佐藤九段が桂を合駒に打ったところで伊藤七段は投了。佐藤九段の勝ちとなりました。

 佐藤九段はこれで1組決勝に進出。もう一つの準決勝、久保利明九段-山崎隆之八段戦の勝者と戦います。

 伊藤七段は3位決定戦で、久保-山崎戦の敗者と対戦。勝てば3年連続で本戦進出となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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