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増田康宏七段、勝ってA級昇級を決めるか? 千田翔太七段-羽生善治九段戦も大注目 B級1組11回戦

松本博文将棋ライター

 1月18日10時。第82期B級1組順位戦の11回戦が始まりました。対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

【東京・将棋会館】

▲千田翔太七段(6勝3敗)-△羽生善治九段(5勝4敗)

▲屋敷伸之九段(5勝4敗)-△佐藤康光九段(4勝5敗)

【愛知・名古屋対局場】

△澤田真吾七段(6勝4敗)-▲横山泰明七段(1勝8敗)

【大阪・関西将棋会館】

▲増田康宏七段(8勝2敗)-△大橋貴洸七段(5勝4敗)

▲糸谷哲郎八段(5勝4敗)-△三浦弘行九段(4勝5敗)

△山崎隆之八段(5勝4敗)-▲木村一基九段(1勝8敗)

※近藤誠也七段(5勝5敗)=空き番

増田七段、勝てば昇級

 ▲増田七段-△大橋七段戦は相掛かりから駒を組み合う進行に。後手の大橋七段が7筋で歩を突っかけて動いたのに対して、37手目、増田七段が手堅く銀を立って受けたところで昼食休憩に入りました。もちろん、まだまだこれからの情勢です。

 ここまで8勝2敗の増田七段。前節12月21日の澤田七段戦では敗れましたが、依然昇級争いトップのポジションは変わりません。本局に勝てば増田七段は昇級決定です。

 大橋七段はここまで5勝4敗。B級1組1期目で順位が低く、逆転昇級はかなり厳しい状況ですが、まだ可能性は残されています。もちろん全力を尽くして戦うことでしょう。

 増田七段はもし敗れても自力は変わらず、最終局の屋敷九段戦に勝てば昇級できるというかなり有利な立場ではあります。それでももちろん、ここで決めておきたいところでしょう。

 12月24日におこなわれたSUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2023・決勝戦。「来年挑戦してみたい事」というトークテーマで、増田七段は次のように語っていました。

増田「将棋の目標になっちゃうんですけど、A級昇級とタイトル挑戦を目標にしたいかなと。ちょっと年末でA級昇級を決められなくて残念だったんですけど、ちょっとまだチャンスは残ってるので。タイトル挑戦も、最近すごくいい感じで勉強できてるので、ねらっていきたいかなと思っています」

 増田七段といえば1月14日の朝日杯2回戦、藤井聡太八冠との激闘も記憶に新しいところ。もしA級に昇級すれば、いよいよ名実ともにトップクラスの棋士といえそうです。

注目の千田七段-羽生九段戦

 6勝3敗の千田七段は自力の立場。初のA級昇級に近づきつつあります。一方、5勝4敗の羽生九段にもA級復帰の可能性は残されています。もし本局で羽生九段が勝てば6勝4敗の同星で並び、順位上位の羽生九段が浮上することになります。

 ▲千田七段-△羽生九段戦は角換わり。61手目、千田七段が左端に垂らされた歩を取り、玉を三段目に上がったところまで進んで、昼食休憩に入っています。

 早くものっぴきならない状況に見えますが、両者ともにおそらく研究は十分。ここまでは12月におこなわれたコンピュータ将棋の大会「電竜戦」で現れた局面でした。dlshogi with HEROZと水匠による現代最前線の棋譜はこちらをご覧ください。

 持ち時間6時間で長丁場の順位戦。ここからは一転して互いに時間を使い合うスローペースになるかもしれません。

田村七段、早い投了

 本日はC級2組9回戦もおこなわれています。

 ▲梶浦宏孝七段-△田村康介七段戦は11時19分、45手で梶浦七段の勝ちとなりました。その結果、梶浦七段は6勝2敗、田村七段は4勝4敗となっています。

 田村七段は前節の本田奎六段戦でも11時15分、36手という短手数で敗れています。

 将棋界屈指の早指しの雄として知られる田村七段。これまでにもこうした早い終局はしばしばありました。よくもわるくも、これが田村流なのでしょう。

 2023年度の将棋界もいよいよ、終盤の佳境を迎えつつあります。春に笑っているのは、誰でしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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