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藤井聡太王将、ドリームマッチ初戦を制す! 羽生善治挑戦者、秘策一手損及ばず 王将戦七番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月8日・9日。静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室において第72期ALSOK杯王将戦七番勝負▲藤井聡太王将(20歳)-△羽生善治挑戦者(52歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 8日9時に始まった対局は9日17時47分に終局。結果は91手で藤井王将の勝ちとなりました。

 藤井王将は王将位初防衛戦となる七番勝負で、幸先よく1勝をあげました。

 第2局は1月21日・22日、大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」でおこなわれます。

 両者の対戦成績は藤井8勝、羽生1勝となりました。

 藤井王将のタイトル戦番勝負における通算成績は40勝8敗(勝率0.833)となりました。

 2日制8時間の対局に限れば25勝4敗(勝率0.862)です。

 藤井王将の今年度成績は36勝7敗(勝率0.837)となりました。

 先手番に限れば、現在18連勝中です。

藤井王将、難解な戦いで抜け出す

 後手の羽生挑戦者が、秘策の一手損角換わりで臨んだ本局。両者の高度な応酬が続いたあともバランスは取れ、53手目まで進んだ2日目昼食休憩の時点では、形勢はほぼ互角でした。後手番としてはまずまずの進行で、さすがは羽生挑戦者というところです。

 63手目。藤井王将はちょうど1時間の長考で、じっと玉近くの桂を跳ねます。これが正確な形勢判断と速度計算に基づく最善手でした。

 うさぎ年の今年、藤井王将は対局前日、うさぎ柄のネクタイをしていました。

 69手目。藤井王将はその桂をさらに中段に跳ね出します。徳川家康とも縁の深い、掛川城での一戦。昨日放映された大河ドラマ「どうする家康」の影響で「おれの白うさぎ」というフレーズが流行っていますが、脱兎のごとく勢いよく跳ね出した桂で、藤井王将リードがはっきりとしました。

 勝勢を築いてからもいつもの通り、藤井王将は誤りません。反撃に転じると、あっという間に羽生玉を受けなしに追い込みます。

 90手目。羽生挑戦者は形作りで角を打ち、藤井玉に王手をかけます。対して藤井王将は相手の歩頭に銀を打ち、合駒。金銀5枚で手厚く守られた五冠王・藤井王将の玉はこれでつかまりません。

羽生「負けました」

 羽生挑戦者が投了を告げ、将棋史に残るドリームマッチの初戦は、藤井王将が制するところとなりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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