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振り駒で先手は藤井聡太王将(20)羽生善治挑戦者、秘策の一手損角換わり! 王将戦第1局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成、写真撮影:筆者)

 1月8日。静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室において第72期ALSOK杯王将戦七番勝負▲藤井聡太王将(20歳)-△羽生善治挑戦者(52歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局がおこなわれるのは掛川城・二の丸茶室。やわらかな朝の光が差し込む中、盤側には日本将棋連盟会長の佐藤康光九段(52歳)と、立会人の久保利明九段(47歳)が座ります。

 王将位獲得数は、佐藤九段2期、久保九段4期、羽生九段18期。三者はこれまで王将戦七番勝負で、数々の名勝負を繰り広げてきました。

(2009年度王将戦第3局、久保利明挑戦者-羽生善治王将)
(2009年度王将戦第3局、久保利明挑戦者-羽生善治王将)

 掛川城での対局は2009年度の王将戦第3局が初。このときは羽生王将-久保挑戦者(立場は当時)というカードでした。

 本局は14回目の掛川対局となります。市内には「将棋のまち 掛川」「祝 王将戦開催」というのぼりが多く立てられ、事前から大変な盛り上がりを見せていました。

 対局室にはまず羽生挑戦者が姿を見せて下座に着きます。続いて初の王将位防衛戦に臨む藤井王将が床の間を背に、上座にすわりました。

 両者ともに大橋流で駒を並べたあと、振り駒がおこなわれます。記録係の中沢良輔三段が藤井王将側の歩を5枚取り、久保田崇・掛川市長に渡します。久保田市長が手の中でよく振って、勢いよくまいた結果、表の「歩」が3枚、裏の「と」が2枚出て、先手は藤井王将と決まりました。

 9時。

「それでは定刻になりましたので、藤井王将の先手番ではじめてください」

 久保九段が声をかけて「両対局者はお願いします」と一礼。持ち時間各8時間、2日制の対局が始まりました。

 まず注目されるのは羽生挑戦者の戦型選択です。後手番のときには、どこかで横歩取りに誘導するのではないか、などの予想もありました。

 そして本局。羽生九段は意表の一手損角換わりを見せました。これを予想していた人はほとんどいなかったでしょう。丸山忠久九段や糸谷哲郎八段などのスペシャリストをのぞいては、最近ではあまり指されない戦型であり、羽生九段の秘策と言ってもいいかもしれません。

 おそらくは、やや意表を突かれたであろう藤井王将。先手番の指し方もいくつか考えられるところです。藤井王将は少しずつ時間を使いながら、攻めの銀を手早く中央に繰り出す早繰り銀を選びました。

 10時半前。25手目、藤井王将は3筋で歩を突っかけて動きました。対して羽生九段も7筋から反撃。ここからは一気に激しい進行になる可能性もあります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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