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【年度内六冠ロード】藤井聡太竜王(20)棋王挑戦まであと3連勝!敗者復活戦で伊藤匠五段(20)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月29日。東京・将棋会館において第48期棋王戦コナミグループ杯・敗者復活戦▲藤井聡太竜王(20歳)-△伊藤匠五段(20歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時51分に終局。結果は135手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王は12月8日、羽生善治九段(52歳)と対戦。その勝者が挑戦者決定二番勝負に進みます。

藤井「まだあまり挑戦を目指すという感じではないですけど。また、次の一局にも全力を尽くせればと思います」

 予選から勝ち上がってきた伊藤五段。今期棋王戦は敗退となりました。

伊藤「かなりトップ棋士の先生とたくさん対局することができたので、とても貴重な経験になったのかと思います」

藤井竜王、きわどくしのいで入玉

 2002年生まれで、同い年の両者。公式戦での対局は今年度NHK杯2回戦(早指し)に続いて2局目となります。

藤井「今回、長い持ち時間で対戦できることは楽しみにしていました」

伊藤「やはり藤井竜王と対戦する機会はなかなかないので。とても楽しみにしていました」

 振り駒の結果、藤井竜王先手で角換わり腰掛銀に。65手目までは今年9月の王座戦五番勝負第2局(千日手局)▲豊島将之挑戦者-△永瀬拓矢王座戦(棋譜はこちら)と同じ進行をたどりました。

藤井「中盤からはこちらの玉がかなり薄い形が続いて。なんとか、それをしのげるかどうかという局面がけっこう長かった一局だったかなと思います」

 午前中のうちに終盤戦となって82手目。伊藤五段は藤井玉が上部に逃げ出すのを防ぐため、8筋に歩を打ちます。藤井玉はいかにも危険な形。しかし藤井竜王は自陣に手を入れることなく、7分で相手玉近くの歩を取り込む、攻めの手を指しました。いかにも藤井流という、驚くべき一手です。

 藤井竜王が83手目を指した時点で、持ち時間4時間のうち、消費時間は藤井29分、伊藤15分。おそるべきハイペースで、終盤の難解な局面を迎えました。

伊藤「△8四歩と打ったときに手抜いて▲4四歩と取り込まれた局面がけっこう、ちょっと方針がわからなくて」

 12時、伊藤五段の手番で昼食休憩に入りました。12時40分に再開したあとも考え続た伊藤五段。50分の長考で、桂を打って攻めました。

伊藤「本譜、そうですね。ちょっと△6四桂から攻めていったんですけど。ちょっと、なかなか(藤井玉を)つかまえきれない展開になってしまったのかと思います」

 上部に逃げ出したとはいえ、藤井玉は2枚の飛車で下から追われ、かなり危ない形。そこを藤井竜王はギリギリしのぎ続けました。

 藤井玉は伊藤陣に入る入玉を果たします。さらに安全に、つかまらない形を目指すのかと思われたところ、111手目、角を打って決めにいきました。これもまた藤井流という感があります。

藤井「あの局面では入玉しているんですけど。まあただ、そうですね。駒を取られているので。あとはなんていうか、後手の方も入玉をねらってくるような展開もありますし。ちょっとあまり、どうなっているかわかっていなかったです」

 伊藤玉を受けなしに追い込んだ藤井竜王。対して藤井玉はかなり危険な形です。豊富な持駒を打ち続け、藤井玉を追う伊藤五段。しかしきわどく藤井玉は逃れていました。

 135手目、藤井竜王が王手で金を打ちます。その先には、詰めろ逃れの詰めろで決める順が用意されています。伊藤五段が潔く投了し、熱戦に幕がおろされました。

 現在ともに20歳の藤井竜王と伊藤五段。両者の対戦は今後さらに増えていくことでしょう。

 棋王挑戦の可能性を残した藤井竜王。年度内の六冠達成はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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