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羽生善治九段、一気に大優勢! 豊島将之九段、重大な誤算があったか? 挑戦権争う王将リーグ最終戦

松本博文将棋ライター

 11月22日。東京・将棋会館において第72期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ最終戦3局がおこなわれています。

 対局開始は10時。挑戦権を争う▲羽生善治九段(5勝0敗)-△豊島将之九段(4勝1敗)戦は、羽生九段先手で角換わりとなりました。

 25手目。羽生九段は歩を突っかけて仕掛けていきました。自陣は居玉のままの速攻です。

 34手目。豊島九段は3筋の歩を突き出します。反撃を含みとした柔らかい手。ここで羽生九段が長考に入り、そのまま昼食休憩となりました。

 12時40分、対局再開。羽生九段は伸ばされた歩を飛車で取ります。持ち時間4時間のうち50分を使う長考でした。

 豊島九段は26分で銀を出ます。飛車にタダで取られるところなので、はっとするような一手。取れば王手飛車の返し技がかかります。

 37手目。羽生九段はきっぱりと銀を取りました。王手飛車がかかるのは承知の上。その先に、さらなる返し技があるのを見越しています。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値の上では、羽生九段優勢。あるいは勝勢と言ってもいい数字が示されました。

 40手目を前にして、豊島九段の手が止まっています。ここですぐに飛車取りに歩を打てないようでは、明らかに変調か。豊島九段は自身の誤算に気づいたか、沈み込んだような様子を見せます。どんな対局でも大きなミスのほとんどない豊島九段。この大一番で、珍しく重大な錯覚をしてしまったのかもしれません。

 14時10分頃、豊島九段の手が盤上に伸びます。豊島九段は飛車を取りに歩を打つのではなく、桂を取りに歩を突きました。51分の長考で自身のミスを認めた上、軌道修正をはかったものと思われます。

 わるくなってからの豊島九段の粘りもまた、天下一品。しかし現状は、羽生九段が藤井聡太王将への挑戦権獲得に向けて、大きく近づいているといって間違いなさそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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