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A級26期の大豪・佐藤康光九段(53)5連敗で陥落のピンチ 稲葉陽八段(34)に大熱戦の末敗れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月16日。東京・将棋会館において第81期A級順位戦5回戦▲佐藤康光九段(53歳)-△稲葉陽八段(34歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は0時45分に終局。結果は144手で稲葉八段が勝ちました。

 リーグ成績は稲葉3勝2敗、佐藤0勝5敗となりました。

稲葉八段、粘り強い指し回しで勝利

 佐藤九段先手で対局開始。そして序盤早々の5手目、四段目に角を上がるのが佐藤流です。続いてさっそうと向かい飛車に構える気持ちのいい作戦。とはいえ、この形を指しこなすには相当な腕力が必要のようで、誰にもマネされていません。

 進んで佐藤九段は角交換から穴熊の堅陣に組みます。稲葉八段はバランス重視の構え。自然な指し回しで、佐藤九段の動きに応じました。

 中盤、佐藤九段がうまく飛車交換に持ち込んでペースをつかんだかと思われたところで、64手目、稲葉八段は自陣飛車を打って粘りに出ます。以下も稲葉八段は息長く折れない指し回し。防壁を築いて佐藤九段の攻めをしのぎ続けました。

 やがて稲葉八段も反撃に転じ、穴熊の弱点である上部からアヤをつけていきます。深夜で時間が切迫する中、いつしか形勢は稲葉八段よしとなりました。

 136手目。佐藤玉には長手数の詰みが生じていました。しかし詰まし損ねると、途端に逆転するところ。稲葉八段は相手の龍の横利きを止め、確実な勝ち方を選びました。

 144手目、稲葉八段は銀を打って着実に寄せます。佐藤九段は攻防ともに見込みなしと判断し、投了。大熱戦に終止符が打たれました。

佐藤康光九段、ここから巻き返しなるか?

 稲葉八段は3勝2敗で白星先行。4勝1敗でトップを走る豊島将之九段、藤井聡太竜王に次ぐ成績で、名人挑戦を目指せる星取りです。

 佐藤九段はただ一人5連敗。名人位2期を含め、A級通算26期の大豪が陥落のピンチに立たされています。残り4戦で巻き返すことができるでしょうか。

 A級5回戦▲糸谷哲郎八段(1勝3敗)-△永瀬拓矢王座(2勝2敗)戦は11月18日、大阪・関西将棋会館でおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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