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史上最年少六冠候補・藤井聡太竜王(20)棋王戦初のベスト4進出! 大難敵・豊島将之九段(32)を降す

松本博文将棋ライター

 10月17日。大阪・関西将棋会館において第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント4回戦▲藤井聡太竜王(20歳)-△豊島将之九段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時28分に終局。結果は107手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王は棋王戦において、初めてベスト4に進出しました。

「敗者復活」の制度があるのが本棋戦の大きな特色。ベスト4以降は2敗失格の形式となります。勝者組準決勝の対戦カードは以下の通りです。

 藤井聡太竜王-佐藤天彦九段

 羽生善治九段-伊藤 匠五段

 藤井竜王の今年度成績は18勝5敗(勝率0.783)となりました。

藤井竜王、攻めをしのいで勝利

 トーナメントでは一局ごとに振り駒によって先後が決められます。本局では「歩」が3枚、「と」が2枚出て、先手は藤井竜王に決まりました。

 戦型は、ここ最近の両者の間では定番の角換わり。互いに腰掛銀に組んでから細かく間合をはかりあう現代調の進行で、藤井竜王が仕掛けて戦いが始まりました。

 互いに相手の攻め駒の桂を取り合ったあと、60手目、豊島九段は自陣に角を据えます。この角を起点として、豊島九段が攻める展開が続きました。

藤井「いきなり攻め込んでこられたのがあまり見えていなかったんですけれど。指されてみると、こちらの玉もかなり薄い形になるので。きわどいところなのかな、と思って指してました」

豊島「ちょっと無理攻めになってしまったような気がします」

 コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は、少し藤井竜王よし。しかし豊島九段の攻めも迫力があり、受け間違えれば途端に危険な形となります。

藤井「かなり受けに回る展開が続いて。うまく手厚くできればと思っていたんですけど。ただ、8七金、8六角の形がやっぱり、かなりわるい形なので。それをうまくほぐせるかどうか。難しいのかなと思っていました」

 83手目。藤井竜王は銀を打って受けました。これが手厚い手段だったようです。

豊島「▲5六銀打じゃなくて▲7八玉とかでもなんか、わるそうな気がしてて。▲5六銀打たれて・・・。うーん。いや、でも、そうですね。▲5六銀打の方がより明快なのかなと、打たれてから思いました」

 84手目。豊島九段は角を切って香と刺し違え、その香を攻めに使います。藤井竜王は冷静に対応。優位をはっきりさせました。

豊島「△1九角成以外の手もなんかあまり自信がない・・・。自信がないというか、わるいかなと思ったんですけど」

藤井「(94手目、相手の飛車筋を止める)▲8五歩と打ったあたりで、陣形を安定させることができたので、指しやすくなったのかなと思いました」

 最後は豊島玉は受けても一手一手。藤井玉にはまだ余裕があり、豊島九段の投了となりました。

藤井竜王、難関突破で史上最年少六冠に近づく

藤井「棋王戦ではベスト4は初めてなので。また次局も集中してせいいっぱい指せればと思います」

豊島「(今期棋王戦は)阿久津さんとの将棋はわりとうまく指せたのかなと思いますけど、ちょっと今日の将棋は、そうですね、無理攻めになってしまったので。よくなかったかなと思います」

 藤井竜王と豊島九段の通算対戦成績はこれで藤井18勝、豊島11勝となりました。

 振り返ってみれば、両者の公式戦初対戦は2017年の棋王戦本戦でした。藤井四段がデビュー以来無敗の29連勝を達成したあとで「もしかしたらこのまま棋王挑戦まで突き進むのではないか」という空気もありました。そこで千日手指し直しの末、破竹の勢いの藤井四段を止めたのが、先輩の豊島八段(肩書はいずれも当時)でした。

 あれから5年経って、棋王戦においても、藤井竜王は豊島九段という大きな関門を抜けたことになります。このまま渡辺明棋王への挑戦権を獲得できるでしょうか。

 藤井竜王は今年度ここまで、叡王、棋聖、王位を防衛。これから竜王、王将を防衛し、さらに棋王を獲得すれば、年度内で六冠に達します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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