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出雲のイナズマ・里見香奈女流五冠(30)棋士編入試験第2局で山形の星・岡部怜央四段(23)と対戦開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月22日10時。東京・将棋会館において棋士編入試験五番勝負第2局▲里見香奈女流五冠(30歳)-△岡部怜央四段(23歳)戦が始まりました。

 本局がおこなわれるのは将棋会館4階、特別対局室。もっともグレードの高い部屋です。本日は対局が多い中で、本局だけが特対に配されている点が、本局の重みを表しているといえます。

 先に部屋に入って下座に着いたのは、試験を受ける立場の里見女流五冠。続いて岡部四段が上座にすわって、両者ともに駒を初形に並べていきます。

 岡部四段は加瀬純一七段門下。将棋プレミアムで解説を務めている戸辺誠七段(36歳)の弟弟子にあたります。戸辺七段は、岡部四段の手が震えているのではないかと指摘していました。観戦者の目にも、心なしかそう映ります。もしそうであれば、やはりこの一番の重みを物語っているといえそうです。

戸辺「『山形の星』って自分で言ってますからね」

 兄弟子はそう語っていましたが、岡部四段がこれからさらに活躍すれば、そのキャッチフレーズも自然と定着してくるでしょう。現代のプロ制度が施行されて以降、岡部四段は山形県出身者として4人目の棋士です。棋士は誰でも、地元の星と表現して間違いではありません。

 女流棋士としては史上最高の実績をあげ、頂点をきわめた里見香奈女流五冠。もし棋士となれば、島根県出身者として、そして女性として初の快挙となります。

 本局の立会人を務めるのは飯野健二八段(68歳)です。

飯野「定刻になりました。棋士編入試験五番勝負第2局は、里見香奈女流五冠の先手番で開始していただきます。ではよろしくお願いします」

 両対局者ともに「お願いします」と深く一礼。持ち時間3時間の対局が始まりました。

 初手、里見女流五冠は5筋の歩を突きます。そして飛車を5筋に回して中飛車に。幼い頃からまったく変わらないスタイルで、この大一番に臨みます。

 岡部四段は居飛車で、攻めの銀を手早く中段に繰り出していきます。対して里見女流五冠も銀を出て対抗。すぐに戦いは起こらず、しばらくは駒組が続きそうです。

 ABEMAで解説を務める菅井竜也八段(30歳)は次のように語っていました。

菅井「初めて会ったのが小学4年生ですね。自分が4年生で、里見さんが5年生ぐらいのときで。小学生の全国大会で初めて会ったというか、初めて見たという感じでした。そのとき里見さんもう有名で。女の子ですごい強いみたいな。そのときも中飛車でこの5五歩位取り中飛車を得意にされてた印象ですね」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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