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「より内容、結果ともに向上させなければいけない」防衛を果たした藤井聡太叡王(19)記者会見全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――防衛おめでとうございます。いまの率直な気持ちは。

藤井聡太叡王「本局、中盤から終盤にかけて苦しい局面が続いて。最後も負けの場面があったと思うので。実感に関してはまだまったくありませんし。今日の将棋を振り返ってどうだったかな、と思っているところです」

――これまでの公式戦で会心の出来だと思ったことは?

藤井「もちろん上手く指せたなと思えるときも、まったくないわけではないんですけど。やっぱりそういった将棋でも振り返ると、やっぱりここは少ししっかり読めていなかったなとか、そういったポイントは常にあるので。そういった意味では一局指すごとにやっぱり課題というのはあるのかな、というふうには思っています」

――タイトル戦13連勝で歴代2位タイ。結果が出ていることについて。

藤井「特に最近は少しタイトル戦の番勝負に星が集まっているところがあるので。もちろん、タイトル戦という大きな舞台でそのような結果が出せていることはうれしいんですけど。ただ、それ以外の対局も含めて、より、内容、結果ともに向上させなければいけないな、とも思っています」

――今日の対局、具体的に負けだと思った局面は。

藤井「本局ですと(終盤の91手目)▲2一飛車と打った局面は足りないかなと思っていて。そのあとは一分将棋になって。ちょっとわかっていなかったんですけど。ただ感想戦で考えた中では、最後も少し足りなかったのかな、というふうに思います」

――これから挑戦して取っていくというモチベーションがない中で防衛戦が続く。モチベーションは低下しない?

藤井「今後、棋聖戦から防衛戦が続いていくことになりますけど。タイトル戦で出る上でもあまり、防衛か挑戦かというのはそれほど大きな違いではないかな、というふうに思っているので。大きな舞台で続けて対局していけるということをモチベーションのひとつにして、やっていければなというふうに思っています」

――対局があまり多くないとき、どのように過ごしてきた?

藤井「特に3月から4月にかけては対局が少なかったんですけど。基本的にはいつもと同じように取り組んで。また、少しずつまとまった時間があったんで、序盤の特に定跡の見直しだったりをしていました」

――終局後、大盤解説場で出口六段が泣いているのを横で見て、どんな気持ちになった?

藤井「そうですね。今日の将棋は終盤が、こちらがずっと苦しい展開が続いていたと思うので。出口六段からすると、やはりそういうふうに思われるのも自然というか、それはやっぱり自分であってもそう思うところはあるのかな、とも思います」

――今日の防衛でタイトル通算8期。木村義雄14世名人や加藤一二三九段に並んだ。

藤井「加藤九段や木村14世名人の頃とはやっぱりタイトルの数がまったく違うので。並んだという気持ちはまったくありませんし。そういった昔の棋士の方の棋譜を見ても勉強になると感じるところもあるので、そういったところもまた学んでいけたらとも思います」

――今回の相手はタイトル戦初登場の出口六段だった。

藤井「いままでのタイトル戦は自分よりキャリアが長い方とばかりだったので、今回はいままでとは少し違うという感じもあったんですけど。出口六段と公式戦でも新人王戦の決勝などで対戦がありましたし。また自分が棋士になる以前にも練習将棋を指していただいたこともあるので。自分としては自然に番勝負に臨むことができたのかな、と思います」

(藤井叡王の言葉はできるだけそのまま、記者からの質問は簡略に表記した)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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