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2018年、藤井聡太七段(当時16歳)史上最年少新人王に! 決勝三番勝負で出口若武三段を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2018年に決勝三番勝負がおこなわれた第49期新人王戦。注目されたのは、日の出の勢いで勝ち進む藤井聡太七段(16歳)でした。(記事中の肩書、年齢はいずれも当時)

 藤井七段はトーナメント表が出来上がったときには四段。2018年2月、2回戦で古森悠太四段と対戦したときは五段。そこから六段、七段と昇段し、7月に3回戦で八代弥六段と対戦したときの肩書は七段でした。

 現在、新人王戦の参加資格は六段まで。藤井七段はあまりに昇段が早いため、16歳にして来期以降の出場資格を失うことになりました。

 藤井七段は準々決勝では近藤誠也五段、準決勝では青嶋未来五段にいずれも勝利。参加2期目で決勝まで進みました。

 もう一方の山から決勝に進んだのは出口若武三段(23歳)でした。当時奨励会在籍中の出口三段は1回戦から順に冨田誠也三段、澤田真吾六段、井出隼平四段、甲斐日向元三段、梶浦宏孝四段を破っています。

 10月10日におこなわれた決勝三番勝負第1局。出口三段先手で、戦型は相掛かりとなりました。中盤でリードを奪ったのは藤井七段。しかし出口三段も踏みとどまって、終盤では勝負形に持ち込んでいます。藤井七段はいやな流れの中、攻防ともに正確な指し手を続けて、再びはっきりリード。いつもながらに鮮やかな一手勝ちを収め、112手で熱戦を制しました。

 続いて10月17日におこなわれた第2局。藤井七段先手で、戦型は角換わり腰掛銀で、当時の最新形に。出口三段の研究が深く、あっという間に中盤の難しいところまで進み、そこで用意の新手が披露されました。しかし藤井七段は誤ることなく、着実にポイントを稼いでいきます。出口三段に力を発揮させるいとまを与えず、藤井七段は一気に押し切り、105手で快勝を果たしました。

 藤井七段は16歳で将棋史上最年少の新人王となりました。

藤井「今年で最後ということで、優勝という形で卒業できたことをうれしく思います」

 敗れた出口三段はその期の三段リーグを抜け、2019年4月に四段昇段しました。

 2022年4月。出口新六段(26歳)は藤井叡王(19歳)への挑戦権を獲得しました。

出口新六段「新人王戦は一瞬で負けてしまった」「タイトル戦というもっと大きな舞台で藤井さんと番勝負ができるっていうのは、一個成長したのかなと思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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