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冬将軍・渡辺明棋王(37)春を迎えて棋王位10連覇を達成! 3勝1敗で永瀬拓矢挑戦者(29)を退ける

松本博文将棋ライター

 3月20日。栃木県日光市・日光東照宮において第47期棋王戦五番勝負第4局▲渡辺明棋王(37歳)-△永瀬拓矢挑戦者(29歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は19時8分に終局。結果は115手で渡辺棋王の勝ちとなりました。

 渡辺棋王は五番勝負を3勝1敗で制し、防衛達成。棋王位10連覇を達成しました。棋王戦での連覇記録は羽生善治現九段(51歳)の12連覇に次ぐものです。

「冬将軍」と呼ばれる渡辺棋王。今期は藤井聡太竜王(19歳)に王将戦七番勝負で敗れ、王将位を失いました。しかし棋王戦では防衛を果たしています。

 渡辺棋王は名人とあわせ、二冠の座を守っています。

 渡辺棋王のタイトル通算獲得数は節目の30期となりました。

 永瀬挑戦者は2017年度の五番勝負に続き、渡辺棋王を相手に敗退となりました。

 両者の対戦成績はこれで渡辺19勝、永瀬6勝となりました。

渡辺棋王、妙手連発で終盤を制する

 渡辺棋王先手で矢倉模様。後手の永瀬挑戦者が速攻を見せるという、現在最新の戦型となりました。

 永瀬挑戦者がリスクを承知の上で積極的に動くのに対して、渡辺棋王は的確に対応。難解な応接を経て、渡辺棋王が優位に立ちました。

 86手目。永瀬挑戦者は受けの勝負手で、角取りに銀を打ちます。

 残り時間が次第に切迫してくる中、渡辺棋王は腰を据えて熟慮。そして42分を使い、タダで取られるところに王手で金を打ちました。これがコンピュータ将棋ソフトも最善として示していた妙手。取れば長手数の果てに、渡辺棋王が勝勢となる順が待っていました。

 対して永瀬挑戦者は21分考え、取れる金を取らずに玉を逃げます。こちらもうなるような応手。苦しい中でじっと辛抱してチャンスを待ちます。

 95手目。渡辺棋王はタダで取られるところに王手で銀を打ち捨てます。これもまた妙手。王手龍取りを実現して、勝勢を確かなものとしました。

 永瀬挑戦者は攻防の角を放ち、最後まで勝負を捨てずに指し続けます。しかし渡辺棋王は最後まで正確。間違えず、きれいにゴールへとたどり着きます。

 攻防ともに見込みのなくなった盤面を見つめ続ける永瀬王座。持ち時間をすべて使い切り、自玉の頭に銀を打って受けました。

 渡辺棋王も秒を読まれながら、鮮やかに永瀬玉を詰ましにいきます。115手目、銀打ちの王手を見て、永瀬挑戦者は頭を下げ、投了の意思を示しました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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