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藤井聡太竜王(19)稲葉陽八段(33)A級昇級決定!「鬼のすみか」B級1組全日程終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月9日。東京・将棋会館、大阪・関西将棋会館において、第80期B級1組順位戦最終13回戦がおこなわれました。結果は以下の通りです。

藤井 聡太竜王(10勝2敗)○-●佐々木勇気七段(7勝5敗)

稲葉  陽八段(9勝3敗)○-●郷田 真隆九段(6勝6敗)

千田 翔太七段(9勝3敗)○-●木村 一基九段(3勝9敗)

屋敷 伸之九段(7勝5敗)○-●近藤 誠也七段(5勝7敗)

三浦 弘行九段(6勝6敗)●-○松尾  歩八段(3勝9敗)

久保 利明九段(4勝8敗)○-●阿久津主税八段(3勝9敗)

※横山泰明七段(6勝6敗)=空き番

 ▲佐々木-△藤井戦は角換わり。佐々木七段用意の早い仕掛けが功を奏して、序盤でリードを奪いました。しかし藤井竜王は決定打を与えず、しのぎ続けます。形勢が揺れ動き、佐々木よしになったかとも思われた終盤戦。71手目、佐々木七段は銀を成り捨てる驚きの攻めを見せました。しかし藤井竜王に正確にしのがれてみると、その手が敗着となったようです。中段に追われて危ない形だった藤井玉はつかまらず、最後は佐々木玉が即詰みに討ち取られました。23時17分、90手で藤井竜王が勝ち、1位通過での昇級を果たしました。

 ▲稲葉-△郷田戦は、稲葉八段先手で相掛かり。難しい中盤戦で稲葉八段が少しずつポイントを重ね、リードを広げていきます。途中、稲葉陣は金4枚、銀2枚の鉄壁に。最後は稲葉八段が押し切って、23時51分、125手で勝利。1期でのA級復帰を果たしました。

 ▲千田-△木村戦は角換わり腰掛銀。中盤は千田七段が桂を捨て、さらには飛車を切り捨てて攻めていくのに対して、木村九段が受ける展開。終盤で木村九段も反撃に転じ、勝敗不明の熱戦となりました。終盤、木村九段は桂3枚を捨てて千田玉に迫りますが、わずかに届かず。0時20分、107手で千田七段の勝ちとなりました。

 例年であれば9勝3敗は昇級ラインを超える好成績です。しかし今期の千田七段は不運にも届かず、次点に終わりました。

 史上最年長でタイトル(王位)を獲得し、今年度は王座にも挑戦した名棋士・木村九段。今期順位戦では振るわず、B級2組への降級が決まりました。

 結果的に残留決定戦となった▲阿久津-△久保戦。久保九段の四間飛車に対して阿久津八段は居飛車穴熊に組みました。形勢ほぼ互角で入った終盤、久保九段が競り勝って、最後は阿久津玉を詰まし、0時26分、124手で終局。久保九段が鬼勝負を制して残留を決めました。

 降級は木村九段、松尾八段、阿久津八段。この実力者3人が落ちてしまうあたりに「鬼のすみか」B級1組の厳しさが示されています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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