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大器・伊藤匠四段(19)王位リーグ白星発進! 172手の大熱戦を制して佐々木大地六段(26)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月24日。東京・将棋会館においてお~いお茶杯第63期王位戦・挑戦者決定リーグ紅組1回戦▲佐々木大地六段-△伊藤匠四段戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時16分に終局。結果は172手で伊藤四段の勝ちとなりました。リーグ初参加の伊藤四段は、幸先のよいスタートを切りました。

 伊藤四段の今年度成績は41勝9敗(勝率0.820)となりました。

 勝率では藤井聡太王位(51勝12敗、勝率0.810)を上回り、全棋士中1位です。

伊藤四段、崩れず制勝

 王位戦は厳しい予選を勝ち上がり、リーグに入るだけでも大変です。そうした中で、佐々木六段は過去4回も予選突破。前期リーグでは初めて残留を果たしました。

 現役最年少棋士の伊藤四段は王位戦初参加。そしていきなり、予選を突破しています。

 今期紅組開幕戦は、若手実力者と最年少棋士がぶつかる好カードとなりました。

 佐々木六段先手で、戦型は相掛かり。佐々木六段が飛を大きく横に展開して歩を取れば、伊藤四段は飛を元の筋にすんなりと戻さぬように角頭の歩を突き、そこから金を中段に繰り出していく。現代最先端の戦いです。

 難しい中盤の戦いを経てリードを奪ったのは伊藤四段でした。相手の飛を取って相手陣に打ち込み、優勢を築きます。

 しかしそこから簡単に土俵を割らない佐々木六段。すさまじい粘りで形勢を押し戻していきます。

 反撃のターンを得た佐々木六段は駒台にある3枚の桂を3筋、2筋、1筋と並べていきます。3桂が中段に並ぶ異形が現れ、その図を見ただけで大熱戦とうかがえそうです。

 伊藤四段にとってはいやな流れだったかもしれません。しかしそこで踏みとどまり、崩れないあたりが高勝率につながっているのでしょう。再び突き放し、着実にゴールに向かいます。

 やがて大熱戦にも終止符。最後は総手数172手で伊藤四段の勝ちとなりました。異形の終局図だけを見ても、すさまじい戦いの果て、という感があります。

 宮田利男八段門下で、伊藤四段の兄弟子である本田奎五段は、棋王戦参加1期目で挑戦権獲得という快挙を達成しました。

 今期新人王にして、勝率1位をうかがう伊藤四段。このまま王位戦七番勝負の大舞台へと登場しても、なんら不思議ではありません。待ち受けているのは同年齢のスーパースター、藤井聡太王位です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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