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斎藤慎太郎八段(28)独走7連勝で名人挑戦目前! 羽生善治九段(51)A級陥落のピンチに追い込まれる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月7日。東京・将棋会館においてA級7回戦▲斎藤慎太郎八段(28歳)-△羽生善治九段(51)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時4分に終局。結果は93手で斎藤八段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は、斎藤八段は7勝0敗。自身があと1勝するか、現在成績2位の糸谷哲郎八段(4勝2敗)があと1敗すると、名人挑戦権獲得が決まります。

 羽生九段は2勝5敗。今後の進行次第では29期連続で在籍中のA級から陥落してしまうピンチに立たされました。

 羽生九段と斎藤八段の対戦成績は羽生5勝、斎藤4勝となりました。

斎藤八段、充実の完勝

 斎藤八段先手で角換わり模様の立ち上がり。そこで羽生九段は変化して角換わりにはならず、定跡形からはずれた「手将棋」の進行となりました。

 斎藤八段は攻めの銀を手早く前線に押し上げ、相手陣をけん制。そのあとで銀を組み替えて駒組を進めます。

斎藤「珍しい将棋ではあるんですけど、考えたことはある将棋で。後手が角換わり以外の形を目指すなら、私自身も考えたことがある将棋だったので。そのときに先手の対策で気になる形を今回はやってみたというところでした」

 斎藤八段は現代風の雁木、羽生九段は少し変形の矢倉に組みます。羽生九段は角を小刻みに動かしていきますが、損得は微妙だったようです。

 53手目、序盤の駆け引きという段階で夕食休憩に。大一番らしい、力のこもった進行です。

斎藤「駒がぶつからずに夕休に入って。けっこうスローペースかなと思っていたというか。少し、もしかしたら作戦勝ちかなという。後手の攻め駒が少ないというのが理由で。ただけっこう、持ち時間も消費していたので。夕休からはちょっと決断よくやらないとな、と切り替えて」

 54手目、羽生九段が8筋の飛車を7筋に寄せて夜戦が始まりました。斎藤八段は少しずつリードを広げ、優位に立ちます。

 58手目。羽生九段は端9筋の香を三段目に浮きました。

羽生「香車、ひどい手だったな」

 局後に羽生九段はそう嘆きました。ただし代わる手も難しかったようです。

 斎藤八段は相手の香浮きをとがめるべく、香を目標にして攻めていきます。

斎藤「駒の損得もないので、具体的な実利はなかったんですけど。(67手目)▲9五歩って突いて、一応駒得になる形というか。▲9五歩を突いたところで、ようやくいけそうかなと思いましたので」

 無条件で駒損してはそれまでとなる羽生九段。相手陣に迫っていきましたが、そこを斎藤八段はしっかりと受け止めます。

斎藤「なにか一手(見落としが)あったら、こちらは受けてる方なんで、負けるので。ずっとひたすら読んでいるというか。少し余していると思いつつ、ずっと神経を使うという感じで」

 90手目。羽生九段は角を成り捨てる最後の突撃に。これまで数々の大逆転劇を演じてきた羽生九段でしたが、本局では足りませんでした。

 93手目。斎藤八段が手厚く角を成り返り、馬を作ったところで、羽生九段は投了しました。

 斎藤八段はこれで無傷の7連勝です。

斎藤「出来すぎというか、ギリギリの勝負も多かったので、こんなに星が片寄るとは思っていなかったところですが。ただ、まだ(名人挑戦権獲得は)わからないですし。最終局が糸谷八段戦で直接対決なんで。できれば次の豊島さんとの対局で決まるようにがんばりたいな、というのが一番思っているところです」

 一方で羽生九段は2勝5敗。残留はやや厳しい状況になりつつあります。ここからしのぐことはできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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