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2019年に王将挑戦を逸した藤井聡太七段(当時)ちょうど2年後の本日、勝てば五冠目挑戦決定の一局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 今からちょうど2年前の2019年11月19日。王将リーグ最終7回戦、一斉対局がおこなわれました。

 4勝1敗で最終戦を迎えたのは広瀬章人竜王(当時32歳)と藤井聡太七段(当時17歳)。両者は最終戦で直接対決し、勝者が挑戦権を獲得するという状況でした。藤井七段は勝勢に立ちながらも、最後に自玉の受けを間違えて頓死を喫するという、劇的な結末となりました。

 それからちょうど2年。藤井七段の段位は九段に。その間、史上最年少17歳で棋聖位を獲得し、以後順に王位、叡王、竜王まであわせもち、史上最年少の四冠となっています。

 2021年11月19日10時。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲藤井聡太竜王(19歳)-△近藤誠也七段(25歳)戦が始まりました。

 今期王将リーグもいよいよ終盤戦を迎えました。

 もし本局で藤井竜王が勝てば藤井5勝0敗、近藤3勝2敗。最終戦を待たずして、藤井竜王の王将挑戦、史上最年少五冠チャレンジが決まります。

 本局、先手番は藤井竜王。昨年、2021年11月20日の王将リーグ最終戦から現在に至るまで、藤井竜王の先手番成績は驚異の32勝1敗(勝率0.970)です。

 藤井竜王は相掛かりを選択しました。その戦型に詳しい解説の本田奎五段が早い段階で「未知の局面」と語ったように、現代最前線の戦いとなりました。

 藤井竜王はスーツの上着を脱いで、グレーのセーター姿。対して近藤七段は上着を着たまま、前傾姿勢で序盤から読みふけっています。

 27手目、藤井竜王は中段に飛車を引きました。近藤七段は28手目を指さず、昼食休憩に。再開は12時40分です。

「藤井五冠はもう決まり!」

 最近の藤井竜王の勝ちっぷりからして、観戦者の間ではそんなムードも感じます。しかしもちろん、実際にはそう容易なことではありません。

 2年前は「藤井最年少タイトル挑戦はもう決まり!」というところからひっくり返っています。

 2018年度C級1組。藤井七段の順位戦での快進撃を止めて、昇級を果たしたのは近藤五段でした。(段位はいずれも当時)

 もし本局で近藤七段が勝てば、リーグ成績4勝1敗で追いつき、最終戦の結果次第となります。

 最終戦まで終わり、永瀬拓矢王座、羽生善治九段も含めて4勝2敗で4者が並ぶ可能性もあります。そうなると順位上位2人がプレーオフ進出という規定から、藤井竜王、近藤七段ともにプレーオフに進めず、挑戦権獲得の目がなくなります。

 はたしてどのような結末が待っているのか。最終戦は11月24日におこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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