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羽生善治九段(51)王将リーグ天王山の一番で矢倉を採用 藤井聡太三冠(19)は堂々と受けて立つ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月9日10時。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲羽生善治九段(3勝1敗)-△藤井聡太三冠(3勝0敗)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局がおこなわれるのは将棋会館5階、特別対局室。藤井三冠はいち早く入室し、上座に着きました。現在の将棋界の席次では、藤井三冠は3位、羽生九段は5位です。

 羽生九段は9時48分頃に到着。下座にすわりました。

 藤井三冠は駒箱から駒袋を取り出し、盤上に駒をあけます。そして「王将」の駒を探したあと、改めて一礼。所定の位置に置きました。羽生九段は「玉将」を取り、両者ともに作法通り大橋流で並べていきます。

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、羽生先生の先手番でお願いします」

 両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間各4時間の対局が始まりました。

 一呼吸をおき、羽生九段は角筋を開きます。

 藤井三冠はいつもの通り紙コップを口にしてお茶を飲みました。そしていつもの通り、2手目、飛車先の歩を突きました。デビュー以来まったく変わることのない、相手のどんな戦型も正面から受けて立つ、王道のスタイルです。

 報道陣が退出する中、藤井三冠はスーツの上着を脱いで丁寧にたたみ、かたわらに置きました。今日もグレーのセーター姿です。

 この大一番で、羽生九段は矢倉を選択しました。五十代となってなお、現代最前線の戦型で戦い続けるのもまた、ずっと変わらぬ羽生流です。

 後手の藤井三冠が速攻を含みとする姿勢を見せたのに対して、羽生九段は慎重に駒組を進めます。羽生九段も上着を脱いで、黒いベスト姿になりました。

 一般的に駒を組み合う相矢倉では、角は引き、転換して使います。本局では両者ともに引角から角が向かい合い、交換に進みました。互いに神経を使う中盤戦となりそうです。

 特別対局室とは壁をへだてて隣りの高雄の間では▲永瀬拓矢王座(1勝1敗)-△広瀬章人八段(2勝3敗)戦がおこなわれています。戦型は相掛かりに進みました。

 雲鶴の間では叡王戦・段位別予選九段戦▲森内俊之九段-△佐藤康光九段戦がおこなわれています。佐藤九段はいわゆる「阪田流向かい飛車」の作戦です。

 また本日は大阪・関西将棋会館で清麗戦五番勝負第4局▲加藤桃子女流三段-△里見香奈清麗戦もおこなわれています。観戦者にとっては忙しい一日となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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