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名人候補・藤井聡太三冠(19)B級1組で郷田真隆九段(50)を降し今期6勝1敗&順位戦通算45勝2敗

松本博文将棋ライター

 10月19日10時。東京・将棋会館において第80期順位戦B級1組7回戦▲郷田真隆九段(50歳)-△藤井聡太三冠(19歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時57分に終局。結果は106手で藤井三冠の勝ちとなりました。リーグ成績は、藤井三冠は6勝1敗、郷田九段は3勝4敗となりました。

 両者の公式戦対戦成績は藤井三冠の2戦2勝となりました。

 藤井三冠の順位戦通算成績は45勝2敗(勝率0.957)となりました。長い順位戦の歴史でも、デビュー以来これほどの成績をあげ続けている棋士はいません。

 また今年度通算成績は34勝6敗(勝率0.850)となりました。

 4年連続で勝率8割を超えている藤井三冠。タイトルを争い、トップ棋士ばかりと当たり続けながら、今期は勝率8割5分に乗せてきました。

 恐ろしいことに、もしかしたら中原誠16世名人が若手五段時代に記録した史上最高勝率0.855(47勝8敗)を更新する可能性もあるのかもしれません。

藤井三冠、名人位に向け、また一歩前進

 郷田九段で、戦型は角換わり腰掛銀となりました。藤井三冠は手早く桂を跳ね、先に動きます。

 昼食休憩明けの45手目。郷田九段は端9筋に角を打ってカウンターを狙います。以下は中盤の難しい折衝が続いていきました。

 藤井三冠は飛車を追われながら4筋に回り、その筋から反撃を仕掛けていきます。いつもに比べ、より積極的に攻める感じだったのかもしれません。

 形勢はほぼ互角。ただし時間消費は大きく郷田九段の方が先行します。

 18時に入るのは夕食休憩。その直前の73手目、郷田九段は相手玉頭、2筋の歩を突き捨てます。休憩に入れば40分ほど時間を消費せず、自身の手番で考えられるところ。そうした駆け引きをせず、盤上で剛直に最善を求めるのが郷田流です。

 対して藤井三冠もまたよく考える。夕食休憩が明けてもすぐには指さず、1時間35分の消費時間で、突き捨てられた歩を銀で取りました。

 形勢が次第に藤井ペースになったかとも思われた87手目。郷田九段は相手玉から遠く離れた8筋一段目に、じっと歩を成ります。手の善悪を超越して、こちらももまた、いかにも格調の高さを感じる郷田流の一手といえそうです。

 郷田九段は9筋で香を得て、藤井玉に王手をかけて迫っていきます。対して藤井三冠は手厚い攻めで着実に郷田玉を押し込んでいきました。

 106手目。藤井三冠は角を打って詰めろをかけます。郷田玉はほぼ受けなし。対して

藤井玉に詰みはありません。

郷田「負けました」

藤井「ありがとうございました」

 郷田九段が静かに投了を告げ、藤井三冠の勝利が決まりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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