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スキなし豊島将之竜王(31)阪田流向かい飛車を打ち破り糸谷哲郎八段(32)に勝利 王将戦リーグ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月30日。大阪・関西将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲豊島将之竜王(31歳)-△糸谷哲郎八段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時40分に終局。結果は95手で豊島竜王の勝ちとなりました。リーグ成績は、豊島竜王1勝1敗、糸谷八段0勝2敗となりました。

豊島竜王、お手本のような完勝

 後手番の糸谷八段は3三金型角交換の立ち上がり。一般的に「阪田流向かい飛車」と呼ばれる戦型を思わせる立ち上がりです。糸谷八段がしばしば用いる作戦であり、また本局もそのように進みました。しかし局後の糸谷八段のコメントによると、予定変更だったようです。

糸谷「予定変更して阪田流にしたんですけど。ちょっと冴えなかったですかね。3三金型の相居飛車の乱戦にしようかと思ったんですけど。(△4四角に)▲8八角で予定変更したので」

 糸谷八段が飛車先を逆襲してきたタイミングで、豊島竜王は反撃に転じます。これが機敏な動きでした。先に銀は損をするものの、糸谷陣にと金を作って攻めがつながる形となり、豊島竜王がリードを奪いました。

 糸谷八段も手段を尽くしてアヤを求めますが、豊島竜王はゆるまず攻め続け、終始優位を保ちます。

 糸谷玉が受けなしに追い込まれたあと、豊島玉は最後の追及をかわして詰まない形。95手で豊島竜王が完勝を収めました。

 糸谷八段は2連敗で、挑戦権獲得はかなり厳しくなりました。

糸谷「下を見る(降級を避ける)戦いに・・・。上を見る(挑戦権を争う)とは言えない成績になってしまったので」

 豊島竜王はこれから、藤井聡太三冠を挑戦者に迎え、竜王戦七番勝負で防衛戦が始まります。ここ何年かは竜王戦と王将戦リーグを並行して戦っている豊島竜王。「そういう経験を活かして」(豊島)と今後の抱負を語っていました。

 糸谷八段と豊島竜王の対戦成績は糸谷6勝、豊島18勝となりました。

 棋王戦ベスト8に残っている両者。本戦4回戦での対戦も決まっています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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