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天才・藤井聡太王位(19)王位戦第4局を制し防衛まであと1勝! 豊島将之挑戦者(31)はカド番に

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月18日、19日。大阪・関西将棋会館においてお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第4局▲豊島将之竜王(31歳)-△藤井聡太王位(19歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 18日9時に始まった対局は19日19時14分に終局。結果は140手で藤井王位の勝ちとなりました。

 七番勝負はこれで藤井王位の3勝1敗。王位初防衛まであと1勝と迫りました。

 第5局は8月24日・25日、徳島県徳島市・渭水苑でおこなわれます。

 両者の対戦成績はこれで豊島8勝、藤井6勝となりました。

 一時は6番ほどの差がついていましたが、ついに2番差まで詰まりました。

 藤井王位の今年度成績は22勝4敗(勝率0.846)となりました。

 両者は王位戦第4局の前に、叡王戦五番勝負第4局を戦います。

 藤井王位は叡王戦第4局で勝てば叡王位奪取。史上最年少三冠となります。

藤井王位、難解な中盤を制す

 先手では角換わりメインで戦ってきた豊島挑戦者。本局では相掛かりを選択しました。

 2日目に入っても難しい中盤戦が続きます。

 80手目。藤井王位は歩を打って、菊水矢倉に収まった豊島玉の上部から攻め始めます。成否はギリギリのところと思われました。しかし進んでみれば、藤井二冠の攻めがつながった形に。形勢の針はいつしか藤井王位よしへと傾いていきました。

 111手目。豊島挑戦者は自陣に銀を打って粘ります。豊島玉の周りには金2枚、銀3枚が集結しました。ただし形勢ははっきり、藤井よし。また持ち時間8時間のうち、残りは豊島11分、藤井36分。藤井王位は時間も残して余裕があります。

 藤井王位が次の手を考える間、豊島挑戦者はしばらくの間、じっとうつむいていました。またそのあとは顔をあげ、盤面を見ず、しばらく中空を見つめます。形勢がどうであれ、豊島竜王は心のうちを表に出さないタイプです。しかしここではその仕草からも、苦しさが伝わってくるようでした。

 藤井王位は慎重に11分考え、桂で金を取って寄せに入ります。

「勝ち将棋、鬼のごとし」

 そんな表現があります。形勢がよくなれば次々と好手段が生まれてくる展開があり、本局の最終盤はそんな状況だったかもしれません。

 121手目。豊島挑戦者は飛車取りに銀を打ち、詰めろを受けます。これで豊島陣は金1枚、銀4枚。藤井王位は粘りを許さず、飛車を角と刺し違え、決めにいきます。

 130手目。藤井王位は角と金を刺し違えます。豊島玉の周りには銀4枚が残りましたが、藤井王位の攻め駒が上下はさみうちで迫り、受けが難しい状況です。

 137手目。

「豊島先生、これより一分将棋でお願いします」

 記録係から声がかかって、豊島挑戦者はこれから一手60秒未満で指す「一分将棋」に。そして中住居の藤井玉に歩を打って王手をかけました。

 残り15分の藤井王位。慎重に2分考えて玉を寄って逃げます。

 57秒まで読まれた豊島挑戦者。今度は桂を打って王手をかけました。これは形作りです。藤井王位、今度は歩を取りながら玉を逃げました。藤井玉は詰まず、一方で豊島玉はほぼ受けなしです。

「40秒・・・」

 秒を読まれながら、豊島挑戦者はマスクをしました。

「50秒、1、2、3、4」

 豊島挑戦者は駒台に右手を添え、深く一礼。

「負けました」

 と投了を告げました。藤井王位も一礼を返し、第4局に幕が降ろされました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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