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19歳になった藤井聡太王位、エース角換わりで豊島将之挑戦者とぶつかる 王位戦第3局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月21日9時。兵庫県神戸市・中の坊瑞苑において、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第3局▲藤井聡太王位(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦、1日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

「定刻になりました。お~いお茶杯第62期王位戦第3局、藤井王位の先手でお願いします」

 立会人の谷川浩司九段(59歳)がそう告げて、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間8時間、2日間にわたる長い対局が始まりました。

 藤井王位はルーティーン通り、まず湯呑を口にします。そして初手、飛車先の歩を一つ前に進めました。先手番だった第1局と同様です。

 豊島挑戦者は「お~いお茶」のペットボトルを手にして封を切り、湯呑に注いで飲みます。そしてこちらも飛車先の歩を突きました。

 藤井王位はまたお茶を飲み、飛車先の歩を五段目に進めます。そして対局室の窓の外に目を向けました。少し遅れて豊島挑戦者もまた、そちらの方に視線を向けます。盤側の関係者が退出しようと席を立つ中、豊島挑戦者も歩を五段目に進めました。

 注目は5手目です。現代ではおおむね、ここで角の横に金を上がれば相掛かり。歩を突いて角筋を開けば角換わりに進みます。第1局では相掛かりでした。

 本局、藤井王位は角筋を開きました。以下は角換わりに進みます。デビュー以来多くの勝ち星を積み重ねてきた、エース戦法です。(もっとも藤井王位の場合、何を指してもほとんどの場合は勝ってきたのですが・・・)

 第2局は豊島挑戦者先手で、角換わりから相早繰り銀へと進みました。本局は腰掛銀です。互いに間合いをはかりあう、現代調の難しい序盤戦に進みました。

 ちょうど11時頃。41手目、藤井王位は4筋から仕掛けていきました。

 44手目。豊島挑戦者は反撃含みに4筋に飛車を回ります。形勢は難解で互角。ここからはスローペースの進行も予想されます・・・と書こうとしたところで、藤井王位の手が動き、飛車取りに歩を打ちました。事前研究なしではもちろん、こう早くは進めることができません。

 47手目、藤井王位は攻めの銀を豊島陣四段目にまで進めます。この先はやはりスローペースか・・・と書こうとしたところで豊島竜王の手が動き、歩を打って銀を追います。両者ともに研究十二分というところなのでしょう。

 50手目、豊島竜王は銀交換に応じました。藤井王位は席をはずしています。帰ってくるのを待つ間、豊島竜王はお茶を一服しました。

 席に戻ってきた藤井王位。駒台に置かれていた角と歩を少し並べ替え、銀を置くスペースを作ります。そして飛車で銀を取って、駒台に置きました。

 時刻は11時半を過ぎました。以後は2日制のタイトル戦らしくスローペースになるのでしょう、と書こうとしたところでまた盤面は動き、52手目、豊島竜王は4筋に銀を上がりました。本局ここまではかなりハイペースの進行と言ってよさそうです。

 藤井王位は7月19日に誕生日を迎え、19歳となりました。現在の通算成績は227勝43敗(勝率0.8407)。勝数、勝率ともに羽生善治現九段(50歳)を上回る史上最高のハイペースです。

 18歳、19歳で四段ならば将来有望。五段ならば目をひくような早い出世です。それがすでにタイトル3期を獲得して段位も九段とは、ちょっと形容する言葉が見つかりません。

 豊島挑戦者の通算成績は519勝237敗(勝率0.6865)。久しくトップクラスの座にあって、依然高勝率をキープしています。

「史上最強」とも称される羽生九段。ここからあと1敗してしまうと長らくキープしてきた生涯勝率7割は割り込むことになります。しかし仮にそうであっても、上記表を見ただけでも、その実績は突出している感があります。

 王位戦は現在すでに63期の予選も始まっています。紅白それぞれ6人、合計12人のリーグに入るだけでも大変です。

 現将棋界の一角・渡辺明名人(37歳)は62期は予選で敗退。今期も予選からのスタートで、昨日は山本博志四段(24歳)に勝利を収めました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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