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いぶし銀の名棋士・桐山清澄九段(73)竜王戦5組残留を決め現役続行決定! 通算996勝達成!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月14日。大阪・関西将棋会館において竜王戦5組残留者決定戦・桐山清澄九段(73歳)-上村亘五段(34歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は17時29分に終局。結果は141手で桐山九段の勝ちとなりました。

 桐山九段は5組残留決定。フリークラス規定により、来期竜王戦出場も決まり、引退を回避しました。

 敗れた上村五段は6組への降級が決まりました。

 また桐山九段は本局の勝利が通算996勝目となりました。

桐山九段、終盤のねじり合いを制して勝ち残る

 いまから34年前の1987年に創設された竜王戦。その記念すべき第1期、最高クラスの1組で優勝を飾ったのは桐山九段でした。

 現在、頂点の竜王位に君臨しているのは、桐山九段の愛弟子である豊島将之竜王(31歳)。竜王戦が始まったときには、豊島竜王はまだ生まれていなかったことになります。

 竜王戦は毎年、竜王位を争う七番勝負をはじめ、挑戦権を争う本戦トーナメントなど、将棋ファンから大変な注目を集めます。

 一方、本局のような残留決定戦は、普段はそれほど注目されることがありません。しかし本局のように名棋士・桐山九段の引退がかかっているとなれば、話は別です。桐山九段は昨年、同じ状況で残留決定戦に臨み、井出隼平四段(現五段)に千日手指し直しの末に勝って、引退を回避しました。

 本局、上村五段にとってももちろん、残留をかけた重要な一局です。ただし、桐山九段の引退がかかっているとあっては、やはりやりづらいところはあるでしょう。

 振り駒の結果、先手は桐山九段。

 桐山九段は初手、どこの筋の歩も突かずに飛車を三間(7筋)に振りました。比較的近年に現れた手法で、桐山九段が棋界の頂点を争い、タイトルを獲得していた頃にはこうした指し方はありませんでした。棋界最年長ながら、現代将棋を追求し続けている姿勢がうかがえます。

 進んで角筋をオープンにしたまま、7筋の歩を突いていきます。手順は異なりますが、かつて升田幸三九段が名人戦の大舞台で採用し、一斉を風靡した「升田式石田流」の形です。

 桐山九段が飛車を中段に浮いたのに対して、上村五段が角を交換。互いに角を手持ちにしたままの序盤戦となりました。

 午後の戦いに入り、上村五段は自陣角を打って動いていきます。対して桐山九段は角を手持ちにしたまま金銀4枚の美濃囲いを組み上げました。序盤は桐山九段が作戦勝ちを収めたようです。

 中盤、駒がぶつかってからは一進一退の攻防が続きました。上村五段がリードを奪ったと思われる場面もあれば、桐山九段が大きく優勢になった場面もありますが、最後は勝敗不明の終盤戦へと入りました。

 両者ともに3時間の持ち時間を使い切って、あとは一手60秒未満で指す「一分将棋」。こうなると一般的には、若い側が有利になる場合が多いのですが、桐山九段は的確に指し続け、大きなミスをおかしません。

 桐山九段は上村五段からの攻めを受け止めたあと、飛車をさばいて上村玉に迫っていきます。

 最後は一手違いの寄せ合い。桐山玉も危ないところまで追い込まれました。しかし桐山九段は勝ちを読み切っていたようです。上村玉をきれいに詰まして、熱戦に終止符を打ちました。

 敗れた上村五段は残念ながら6組降級となりました。しかしまだ34歳という若さ。捲土重来に期待したいところです。

 勝った桐山九段は昨年に引き続き、負ければ引退という一番に勝って現役続行を決めました。来期は4組昇級が条件となるため、状況はさらに厳しくなりますが、ともかくも、今年もまた多くのファンから祝福されながら、現役続行を決めました。

 桐山九段自身がずっと目標として掲げてきた1000勝までは、あと4勝。残された竜王戦の舞台で、悲願を達成することはできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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