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藤井聡太棋聖との五番勝負に名乗りをあげるのはどちらか? 棋聖戦挑決▲渡辺明名人-△永瀬拓矢王座戦開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成・筆者)

「それでは時間になりましたので、渡辺先生の先手番でお願いします」

 4月30日10時。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦・挑戦者決定戦▲渡辺明名人(37歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦が始まりました。本局の勝者が藤井聡太棋聖(18歳)への挑戦権を獲得します。

 定刻を告げる記録係の声を聞いて、両対局者は一礼。振り駒で先手番を得た渡辺名人はしばし瞑目します。やがて2筋、飛車先の歩を突きました。

 対して永瀬王座は8筋、こちらもまた飛車の前の歩を一つ前に進めます。永瀬王座はすぐにスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツ姿となりました。

 床の間を背にして上座にすわっているのは棋王、王将を含め三冠を合わせ持つ、席次1位の渡辺名人です。

 2020年度は渡辺名人、豊島将之竜王(31歳)、藤井棋聖、永瀬王座、タイトル保持者「四強」の活躍が目立ちました。

 2021年度、最初の挑戦者決定戦でも、四強のうちの2人がぶつかったことになります。

 戦型は相掛かりへと進みました。四強をはじめ、現代将棋界でトップクラスが多く採用する戦法です。

 渡辺名人は先日おこなわれたばかりの名人戦七番勝負第2局でも斎藤慎太郎八段(28歳)を相手に相掛かりで臨み、快勝を収めています。

 渡辺名人は昨日は移動日。名人戦対局場の福岡県飯塚市から東京の自宅に戻ってきました。渡辺名人の今年度成績は2勝1敗。本局は名人戦第2局と第3局の間に設定されました。

 永瀬王座の今年度成績は4勝1敗。直近では佐々木大地五段に今年度初黒星を喫しました。

 王位戦リーグもあとは最終戦を残すのみ。永瀬王座は1敗を喫したものの、依然白組で優勝し、挑戦者決定戦に進む可能性を残しています。永瀬王座が棋聖戦、王位戦と2つのタイトル戦で藤井二冠に挑戦する可能性もあります。

 本局、永瀬王座は24手目、8筋の飛車を7筋にスライドさせ、横歩を取りました。これで1歩得の実利を得たことになります。

 時刻は11時を過ぎました。現在は渡辺名人が25手目を考えています。

 本局の持ち時間は各4時間。12時から40分間の昼食休憩をはさみ、通例では夜に終局を迎えます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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