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アマ初の竜王戦6組決勝進出ならず 小山怜央さん(27)若手実力者・長谷部浩平四段(27)に敗れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月28日。東京・将棋会館において第34期竜王戦6組ランキング戦準決勝▲長谷部浩平四段(27歳)-△小山怜央アマ(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時0分に終局。結果は99手で長谷部四段の勝ちとなりました。

 長谷部四段は決勝に進出。折田翔吾四段と優勝、そして本戦進出をかけて対局します。

 小山さんはあと1勝でアマチュア初の決勝進出、5組昇級というところまで迫っていました。しかし残念ながら敗退です。

 アマは昇級者決定戦に進むことはできないので、5組昇級の可能性もなくなり、小山さんの今期竜王戦でのチャレンジはここまでとなります。しかしアマ初の4勝をあげるなど、素晴らしい快進撃でした。

アマチュアの夢は続いていく

 今日は将棋界でトップを争う渡辺明名人と斎藤慎太郎八段が戦う名人戦七番勝負第2局もおこなわれていました。しかし本局、若手新鋭とアマチュアの勝負をずっと観戦し続けていたという方も多かったかもしれません。

 1987年に竜王戦が創設され、プロ公式戦にアマの名が記されているのを見た当時の人々は(筆者もその一人ですが)新しい時代の到来を感じました。

 以来、アマチュアが竜王戦6組で勝ち進むという夢は、繰り返し、繰り返し語られ続けてきました。

 第4期(1990-91年)には天野高志さんが3勝し、準決勝まで進んだという例もありました。

 しかしアマチュアが6組で優勝した例はなく、また決勝に進出し、5組昇級を決めたという例はこれまでにありません。

 竜王戦6組は、第1期(1987-88年)は19人の参加者でした。それが次第に増え続け、今期は66人です。小山さんは史上初めて4勝をあげ、準決勝に進んだアマとなりました。

 小山さんは泉正樹八段、門倉啓太五段、出口若武四段(現五段)、西山朋佳女流三冠を破ってベスト4に進出しました。

 長谷部四段は王位リーグにも入るなど若手実力者。準々決勝では佐々木大地五段に勝っています。

 本局は長谷部四段先手で、戦型は相矢倉。互いにじっくりした駒組から、小山アマは穴熊に組みました。

 午後の戦いに入り、長谷部四段は満を持して仕掛けていきます。進んで、長谷部四段の歩を使った攻めが次第にヒット。形勢は長谷部よしではっきりしていきます。このあたりはさすがにプロの実力が発揮されたという場面でしょう。

 本局は中盤の早い段階で差がついて、残念ながら小山さん本来の実力が出せなかったのかもしれません。

 小山陣の穴熊は受けるスペースがなくなり、やがて受けなしに。最後は長谷部四段が小山玉を詰まし、17時ちょうど、比較的早い時刻での終局となりました。

 大勝負――というのはアマチュア側に立っての見方ですが、アマの夢を乗せた大勝負は、やや一方的な内容で終わりました。長い将棋の歴史を振り返ってみれば、大勝負は、ときに一方的になってしまうようです。しかしそれはプレッシャーのかかる勝負で長谷部四段が実力を発揮したということでしょう。またここまで勝ち進んだ小山さんも見事というよりありません。

 前期は西山朋佳女流三冠、今期は小山怜央アマが竜王戦6組で準決勝まで進みました。それに続く女性やアマチュアは、必ずまた現れるはずです。

 長谷部四段は実力を発揮して6組決勝に進出しました。対戦相手として待っているのは、アマ棋界で活躍したあと、編入試験を経て棋士となった折田翔吾四段です。そちらもまた注目の一局となるでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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