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長谷部浩平四段(26)竜王戦6組ベスト4に進出 強敵・佐々木大地五段(25)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月25日。東京・将棋会館において第34期竜王戦6組ランキング戦準々決勝▲長谷部浩平四段(26歳)-△佐々木大地五段(25歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時22分に終局。結果は77手で長谷部四段の勝ちとなりました。

 長谷部四段はこれでベスト4に進出。準決勝で小山怜央アマと対戦します。

長谷部四段、受けきって勝利

 佐々木五段と長谷部四段の過去の対戦成績は、佐々木4勝、長谷部1勝。今年度は2回対戦し、C級2組順位戦では長谷部四段の勝ち。つい先日、3月16日におこなわれた王位戦リーグでは232手の大熱戦の末、大逆転で佐々木五段が勝っています。

 王位戦で厳しい予選を勝ち抜いき、リーグ入りを果たしている。その事実が両者の実力を端的に示しています。一方で両者はともに竜王戦では6組。順位戦ではC級2組。その事実もまた、将棋界が将棋界がそれだけ厳しいところであると示しているようです。

 先日2組準決勝では八代弥七段が渡辺明名人に勝ち、1組昇級を決めました。

 名人に勝つほどの実力者である八代七段も、順位戦ではC級2組。「竜王戦は1組、順位戦はC級2組」という例は、先崎学現九段(1995年、当時六段)と八代七段(2021年)しかないようです。

 6組は本局でベスト4が出揃います。トーナメント表において本局となりの準々決勝は前日おこなわれ、小山アマが西山朋佳女流三冠に勝ちました。

 小山アマにはアマチュア初の決勝進出の期待がかかっています。佐々木五段、長谷部四段、どちらが勝ち上がってきても、小山アマにとっては大きな壁となるでしょう。

 本局は振り駒の結果、長谷部四段。戦型は互いに金銀3枚を組み合う相矢倉に進みました。

 後手番の佐々木五段は先攻し、積極的に動いていきます。両者ともに矢倉城は築いたものの、玉は最後まで入城しませんでした。

 長谷部四段は丁寧に受け続けます。

 57手目。長谷部四段は飛車取りに歩を打ちました。持ち時間5時間のうち、残りは長谷部2時間1分、佐々木25分。形勢はほぼ互角でも、時間には大差がついています。

 佐々木五段は飛車をどこに逃げるか。もし7筋に逃げて金に当て返したら、千日手となる可能性もあったようです。本譜は7分の考慮で、じっと9筋に逃げました。このあたりから形勢の針は長谷部四段へと傾いていったようです。

 佐々木五段は駒損ながら猛攻を仕掛けていきます。長谷部四段は落ち着いて応対。自玉が薄くなっていて危険なようですが、正確に受け続けしのぎます。

 佐々木五段は矢倉の城外に置かれたままの玉の位置がわるく、攻め駒が王手で抜かれる形。最後は残り7分の持ち時間をすべて使い、攻防ともに見込みなしと判断して、次の手を指さずに投了しました。

 佐々木五段は昇級者決定戦に回り、そちらから5組昇級を目指すことになります。

 長谷部四段は強敵を降してベスト4に進出。小山アマとの準決勝に臨みます。大変に注目される一局となることは間違いありません。両者は2019年、2期前の竜王戦6組でも対戦。そのときには長谷部四段が勝っています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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