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攻める渡辺明王将VS受けて反撃、永瀬拓矢挑戦者 王将戦七番勝負第3局2日目開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月31日9時。栃木県大田原市・ホテル花月において王将戦七番勝負第3局▲渡辺明王将(36歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 16年連続となった大田原での王将戦対局。ホテル花月での対局は15年連続です。渡辺王将はここで4勝1敗と好成績を収めています。

 2日目朝。永瀬挑戦者、渡辺王将の順に対局室に現れ、席につきます。渡辺王将は盤上に駒をひらき、作法通り、まず「王将」の駒を据えます。永瀬挑戦者は「玉将」。駒を並べ終えたあと、立会人の中村修九段が声をかけます。

中村九段「それでは1日目の指し手を再現していただきます」

広森三段「先手・渡辺王将▲2六歩。後手永瀬王座△8四歩。・・・」

 記録係・広森航汰三段が読み上げる棋譜にしたがって、両対局者は前日の指し手を再現していきます。

 渡辺王将先手で、戦型は互いに飛車先の歩を突き合う相掛かりに。第1局、第2局は1日目午前からハイペースで進みました。本局は比較的ゆっくりとした進行とはいえ、盤上は一触即発で、ちょっとした油断も許されません。

 8筋で飛車先の歩を交換した永瀬挑戦者。渡辺王将の注文に乗り、前線に飛び出た飛車を横にスライドさせるモーションで、7筋の歩を取ります。さらには3筋の歩も取って2歩得の実利を得ました。

 渡辺王将は角交換をしたあと、27手目、7筋に桂を跳ねます。ここで昼食休憩に入りました。

 永瀬挑戦者は昼食休憩の1時間をはさんで、なお長考します。消費時間は2時間17分。読みに読んだ末に、自陣中段に角を打ちました。

 34手目。永瀬挑戦者は飛車で4筋の歩も取ります。これで3歩得。ただし局面全体ではバランスが取れいていて互角です。

 渡辺王将は1時間29分を使い、次の手を指さず、そのまま封じ手としました。

 昨日1日目の戦いが2日目朝、盤上で再現されたあと、中村九段が声をかけます。

「それでは封じ手を開封いたします」

 中村九段は封じ手用紙が収められた2つの封筒にはさみを入れます。

「えー、封じ手は▲8二歩です」

 35手目。中村九段が読み上げた渡辺王将の封じ手は、桂取りに歩を打つ攻めの手でした。

 9時。

「それでは定刻となりましたので再開してください」

 中村九段が声をかけて、2日目の対局が始まりました。

 永瀬挑戦者はすぐに桂を逃げます。渡辺王将の封じ手を予期し、昨晩から読みに読んでいたであろうことを感じさせるような早さです。

 両者の読み筋が合い、すぐに手が進んでいきます。渡辺王将が攻め、永瀬挑戦者が受ける。そして42手目、永瀬挑戦者は攻防の角を放ちます。

 時刻は10時を過ぎました。現在は渡辺王将が43手目を考えています。

 本日は日曜日。10時30分からはNHK杯3回戦、永瀬王座-木村一基九段戦が放映されます。

 こちらもファン必見の好カードです。本日でNHK杯はベスト8が出揃います。

 渡辺王将は羽生九段に敗れています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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