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藤井聡太二冠(18)竜王位挑戦を目指す戦い始まる 2組1回戦で実力者・阿久津主税八段(38)と対局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月29日10時。大阪・関西将棋会館において竜王戦2組1回戦▲藤井聡太二冠(18歳)-△阿久津主税八段(38歳)戦が始まりました。

 豊島将之竜王(30歳)への挑戦権を争う第34期竜王戦は1組から6組までランキング戦が進行中。本局は全クラス通じて最後の1回戦となります。

 2組の反対側の山では、藤井二冠の師匠・杉本昌隆八段は1回戦で渡辺明名人に敗れました。前期3組決勝では師弟戦が実現しましたが、今期2組決勝では、その可能性はなくなりました。

 渡辺名人は郷田真隆九段にも勝ち、すでにベスト4に勝ち上がっています。もし渡辺名人、藤井二冠が勝ち上がっていけば決勝で対戦することになります。

 藤井二冠は現在、今年度2回目の10連勝中。年度成績は37勝8敗(0.822)です。

 勝率、勝数は全棋士中1位。相変わらず恐ろしいまでの勢いで勝ちまくっています。直近の朝日杯、豊島竜王を相手に初勝利をあげたのは記憶に新しいところです。

 阿久津八段の今期成績は8勝14敗(勝率0.364)。関東在住の阿久津八段は本局、アウェイの関西への移動となります。

 9時40分頃、藤井二冠は関西将棋会館5階・御上段(おんじょうだん)の間に姿を見せます。4人の永世名人の書が飾られている床の間を背にして、上座に着きました。

 阿久津八段は9時55分頃に入室。両者駒を並べ終えたあと、記録係が振り駒をします。結果は「歩」が3枚出て、藤井二冠先手と決まりました。

 4手目。阿久津八段は端9筋を突きます。これは早くも変化球といったところで、最序盤から駆け引きが始まります。藤井二冠は3分考えて端を受けました。9筋の突き合いはこの先、大局にどのような影響を及ぼしてくるのか。

 6手目。阿久津八段は3筋に金を上がります。

飯塚「それですか! それはちょっと予想しなかったですね」

 ABEMA解説の飯塚祐紀七段はそう声をあげました。これもまた細心の駆け引き。両者の過去の対戦(藤井勝ち)と同じく、一般的に「阪田流」と呼ばれる戦型に進むのではないかと思わせます。

 しかしそうかと思えば、阪田流にも進みません。阿久津八段は駆け引きの末、相居飛車から横歩を取らせる作戦を選びました。

 角交換がされたあと23手目、藤井二冠は3筋から2筋に飛車を戻します。定跡形からははずれ、両者の力と力がぶつかり合う進行となりました。

 竜王ランキング戦の持ち時間は各5時間。昼食、夕食の休憩をはさんで、通例では夜に決着します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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