Yahoo!ニュース

豪腕無双・西山朋佳女流三冠(25)名棋士・森下卓九段(54)を降して棋聖戦二次予選決勝進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月7日。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦二次予選▲西山朋佳女流三冠(25歳)-△森下卓九段(54歳)選がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時4分に終局。結果は133手で西山女流三冠の勝ちとなりました。

 西山女流三冠はこれで二次予選決勝進出。女性初の決勝トーナメント(ベスト16)進出をかけて屋敷伸之九段(48歳)と戦います。

西山女流三冠、さらに快進撃続く

 西山女流三冠(奨励会三段)は女性として初めて棋聖戦一次予選を突破しました。

 二次予選は対戦相手がさらに厳しくなります。

 森下九段は棋戦優勝8回、タイトル挑戦6回、A級通算10期などの実績を誇る名棋士です。

 先手となった西山女流三冠は得意の中飛車に構えます。そして角を交換しました。

 森下九段は相手の動きに応じながら、棋風通り手厚く中央に銀を2枚並べます。

 棋聖戦二次予選の持ち時間は各3時間。駒組が終わって本格的な戦いが始まるまで、互いに半分ほど時間を使っていました。

 森下九段は西山玉を直接ねらう位置に飛車を移動し、縦から攻めます。

 一方の西山女流三冠は中央から押し返し、難しい中盤戦が続きました。

 83手目。西山女流三冠4筋に歩を垂らします。中央に移動した森下玉に近いところで、筋のよさそうな迫り方です。残り時間は西山51分。森下28分。

 森下九段は堂々とその歩を飛車で取りました。丹念に相手の駒を取り続けるのが森下九段の棋風です。ただしこの場合は飛車がねらわれる位置に呼ばれて危ない形。途端に西山女流三冠から角を切って銀と刺し違える強手が飛び出しました。このあたりから流れは西山女流三冠ペースとなったようです。

 西山女流三冠は手にした飛車を森下陣に打ち込んで寄せを目指します。そして的確なパンチが次々とヒット。

 最後は西山女流三冠が森下玉を即詰みに討ち取って、見事な勝利を飾りました。

 公式戦で次々と実績をあげ続けている西山女流三冠。現在は奨励会三段の立場で四段昇段を目指しています。女性が決勝トーナメントに進出した場合の特典などは規定として設けられていませんが、勝てばもちろん、なんらかの議論は起こることでしょう。

 西山女流三冠が二次予選決勝で対戦するのは、棋聖位通算3期などの実績を誇る屋敷九段。言うまでもなく、大変な難関であることに間違いありません。しかし、もしここも突破すれば、将棋史に新たに刻まれる快挙と言って過言ではないでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事