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永瀬王座、王将戦リーグ最終戦で敗れて挑戦権争いはプレーオフに! 広瀬八段は残留、藤井二冠は陥落決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月20日。東京・将棋会館において王将戦リーグ最終戦▲広瀬章人八段-△永瀬拓矢王座戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時20分に終局。結果は125手で広瀬八段の勝ちとなりました。

 敗れた永瀬王座はこれで5勝1敗。豊島将之竜王-羽生善治九段戦の勝者と、11月30日におこなわれるプレーオフ(挑戦者決定戦)を戦うことになりました。

 前期挑戦者の広瀬八段は3勝3敗でリーグ残留を勝ち取りました。

 同じく19時20分。藤井聡太二冠は木村一基九段に101手で勝利。相矢倉で攻め続けての快勝でした。藤井二冠は3勝3敗。ただし広瀬八段と同成績ながら順位は下位のため、リーグ陥落となりました。

 残る豊島竜王-羽生九段戦は熱戦が続いています。

【追記】結果は豊島竜王の勝ちとなりました。

広瀬八段、永瀬王座の全勝を止める

 戦型は横歩取り。1歩損の永瀬王座は中盤では逆に1歩得となりました。そして相手陣に角を打ち込んで香得も果たします。

 対して広瀬八段は飛と桂のコンビネーションで中央を突破。広瀬八段の攻めがギリギリのつながるか。それとも駒得の永瀬王座が受けきるか、という展開になりました。

 71手目。広瀬八段は王手で一段目に金を打ちます。

近藤誠也七段「素朴な手ですけれど、これが厳しかったですね」

 広瀬八段が攻めをつなげる好手を見せ、ペースをにぎったようです。

 永瀬王座は飛を取らせる代償に自陣に馬を引きつけ、頑強に抵抗します。

 83手目。広瀬八段は馬取りに香を打ちます。これもまた好手。永瀬王座は31分を使って中段に馬を逃げ、攻め合いに活路を求めました。残りは21分。対して広瀬八段は53分を残しています。

 盤上の形勢も残り時間も苦しいところ。永瀬王座はバナナを手にして食べます。手数が長くなっても簡単には折れないという姿勢です。

 広瀬八段は相手陣に飛を打ち込んで着実にリードを広げ、優位を確かなものとしました。

 最終盤。永瀬王座は最後まで攻防ともに手段を尽くします。しかし広瀬八段の寄せは正確で誤りません。最後は永瀬玉を即詰みに討ち取って決めました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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