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挑戦権を争う永瀬、豊島、羽生 残留を目指す広瀬、藤井聡太 王将戦リーグ最終戦、午後の戦い始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月20日10時。東京・将棋会館において王将戦リーグ最終戦、一斉対局が始まりました。

 ▲広瀬章人八段(2勝3敗)-△永瀬拓矢王座(5勝0敗)戦は高雄の間、他の2局は特別対局室に配されています。

 11月9日、棋王戦勝者組準決勝の両者の対戦では、後手番の永瀬王座は一手損角換わりの作戦を取りました。

 王将戦でまたも後手番の永瀬王座。本局は横歩取りに誘いました。この戦型は先手の歩得VS後手の手得、いずれのメリットが優るのか、という点が一つのポイントとなります。永瀬王座は端1筋を突き越します。

「味わい深いですね」

 と解説の佐々木大地五段。

 38手目。永瀬王座は強く飛車をぶつけます。広瀬八段はストレートに飛車交換に応じるか。それとも歩を打って拒否するか。いずれも考えられそうです。

 広瀬八段はここで次の手を指さず、昼食休憩に入りました。

 ▲豊島将之竜王(4勝1敗)-△羽生善治九段(4勝1敗)戦は特別対局室、窓側の最上席。

 戦型は▲広瀬-△永瀬戦と同じく、横歩取りとなりました。

 横歩を取った豊島竜王は飛車を3筋から2筋に戻したあと、再び3筋に戻しました。このあたり、細かい駆け引きです。

 31手目、豊島竜王は飛車を一つ浮きます。局面は早くも一触即発の状況となりました。羽生九段がもし角交換を目指せば、豊島竜王は浮いている金を取りながら飛車を成り込む激しい順があります。

 羽生九段は早くも前傾姿勢。いいと判断すれば踏み込むのが羽生流。強く踏み込む可能性も考えられそうです。

 羽生九段が30分考えたところで12時、昼食休憩に入りました。

 寒い季節には豊島竜王のカーデイガン姿が見られるのが現代将棋界の風物詩。午前中、豊島竜王はワイシャツ姿でした。

 ▲藤井聡太二冠(2勝3敗)-△木村一基九段(0勝5敗)戦は特別対局室、入口側に配されています。

 藤井二冠先手で、戦型は相矢倉。後手の木村九段は金金銀の3枚で堅い金矢倉を作ります。対して藤井二冠もそうするのか。あるいはバランス重視の「土居矢倉」の構えにするのか。

 34手目。木村九段が端9筋の歩を突いたところで昼食休憩に入りました。

 大変注目されている王将戦リーグ。それを示すかのように、映像を中継している将棋プレミアムにはアクセスが殺到して、なかなかつながらない状況になっていたようです。

 12時40分、対局再開。

 羽生九段は激しい変化を避け、比較的穏やかに2筋に飛車を回りました。

 藤井二冠はじっと端1筋の歩を伸ばしました。こちらはもうしばらく駒組が続くのかもしれません。

 再開後、少しして、広瀬八段は飛車交換を拒否しました。難しい中盤の駆け引きが続きそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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